弁護士のエッセイ

2019年12月01日
IPBAシンガポール総会とアメリカ旅行

今年の4月と8月にたて続けに海外旅行をすることになった。IPBA(Inter―Pacific Bar Association、環太平洋法律家協会)のシンガポール総会とニューヨーク旅行である。なお、IPBAとはアジアを中心とした環太平洋でビジネスローを取り扱う弁護士の団体である。1年に1度、各国の持ち回りで開催される総会が主たる活動である。

IPBAシンガポール総会は2010年に開催されて以来9年ぶりである。前回は2回目のIPBA参加で翌年の京都総会のための視察を兼ねたものであったが、今回は10回目のベテランとしての参加である。これまでの参加で毎年顔を合わせる弁護士と今年も会って旧交を温めあったり、新しく知り合いになった弁護士ができたりして、相変わらず楽しく、かつ刺激的な数日間であった。
前回はリークワンユー元シンガポール首相の主催するレセプションとアル・ゴア元アメリカ合衆国副大統領の講演という目玉企画があったが、今回はそういう目玉企画はなかった。前回は国家の威信をかけたという感じの力の入れ方を感じたが、今回はすでに一流国になった(一人あたりの国民総所得では日本よりはるか上になったし、映画「クレイジー・リッチ!」で超金持ち階級の舞台ともなった)こともあるのか、力を抜いたリラックス気味の大会であったように思う。前回は会場の運営に不具合があったり、推奨されたホテルが建設途中で寝ていると天井が落ちてきたというような話があったりしてハプニング満載だったが、今回はそういうおもしろエピソードもなく、淡々とスケジュールがこなされた。
そのため会議の中身よりも会場周辺の変化の方が記憶に残っている。たとえば有名なラッフルズホテル内の部屋を借りていくつかパーティが開催されていたが、以前のラッフルズホテルに比べてカジュアルになったというか高級感がなくなったというか、という感じだった。ホテル内には日本の居酒屋も入っていたりして少し興ざめな思いをした。これに対して、市内のショッピングモールは数も増え、また以前に比べて大きく発展し、かつソフィスティケートされたように思った。地下街は拡張、整備されて、迷路のような大きさになっていた。当然、中には一流ブランドの多種多様なレストランが入っており、私が社外役員をしている大阪王将の店舗もあり、食べ歩いてみたが、日本の味とほぼ同じで美味しかった。
会議の中身としては、LCCに関する法的検討のセッションがおもしろく、一族の中にLCCの会社を経営している者がいるというフィリピンのセレブな弁護士がスピーカーとして参加してLCCの実態や運営上の問題点などを話してくれた。初めて聞く話で非常に興味深かった。

ニューヨーク旅行については、ニューヨーク旅行といいながら3泊はニュージャージー州のサマーセット市の兄宅に泊まり、ニューヨーク市内に泊まったのは1泊だけである。同行者は18歳の大学生の娘である。ニューヨークに行ってみたいというので夏休みでもあるし連れて行った。2017年には家族でロサンゼルスに行ったが、今回は下の娘は予備校のため妻と二人で留守番となった。
ニューヨークは5年前のIPBAバンクーバー総会の際に1日だけ立ち寄って以来である。前回はメトロポリタン美術館を訪れた後にミュージカルを見ただけだったが、今回は2日間フルに時間があり、娘にとっては初めての自由の女神のあるリバティ島、セントラルパークや9.11の跡地であるグラウンドゼロ(これは私も初めて)を訪れたり、ウルフギャング(後で日本にも数店舗あることを知った)でステーキを食べたりとしっかりと観光した。もちろん、メトロポリタン美術館もミュージカルも堪能した。ミュージカルは前回、あらすじしか知らない「キンキーブーツ」を選んで物語の展開についていけなかったので、その反省を活かして「ジャージーボーイズ」と「アナと雪の女王」にした。どちらも映画を見て物語の内容はしっかりと頭に入っているのでとっても楽しめた。
ニューヨークもキャッシュレス化は進んでいて、地下鉄の料金もクレジットカードで支払える。しかし、アメリカらしく機械によって感度がバラバラで、何度やっても受け付けてくれないものもあれば、スムーズに払えるものもある。まあ、アメリカで機械の故障に腹を立てても仕方ないけど。

シンガポールもニューヨークも天気は悪くなく、どちらも以前に1度もしくは数回訪れた街で、その意味では新鮮味はなかったが、サイズ感等の感じはわかっており、リラックスして楽しめた。特に娘とのニューヨーク旅行は、そう何度もあるものではなく思い出に残るものであった。

弁護士 池田 佳史