2015年6月株主総会の留意事項
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<ポイント>
◆2015年6月の定時株主総会では法改正に対応する必要あり
◆社外取締役選任と内部統制システムの整備は重要
◆社外取締役を選任する会社も「相当でない理由」について対応を

多くの上場会社が定時株主総会を開催する6月末まであと3ヶ月弱です。
改正会社法及び改正会社法施行規則等が2015年5月1日に施行されることから、6月の定時株主総会ではこれにそった対応が必要となります。
改正点は多数あり、対応すべき点も多岐にわたりますが、その中でも社外取締役の選任と内部統制システムの整備は重要な事項です。
社外取締役の選任については今回の会社法改正の最も重要なテーマの一つといえ、すでに対応をしている会社も多いと思いますが、本稿では改めて整理することとします。なお内部統制システムの整備については、拙稿「改正会社法と会社法施行規則案における内部統制制度の整備に注目」で解説しています。

改正会社法では、監査役会設置会社に社外取締役の選任義務を負わせませんでしたが、株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明義務を負わせることにしました。
具体的には以下の場面でこの説明義務を負うことになります。
1 事業報告書の会社役員に関する事項として「相当でない理由」を記載しなければならない(改正会社法施行規則124条2項)。
2 株主総会参考書類の中の役員選任議案において「相当でない理由」を記載しなければならない(改正会社法施行規則74条の2)。すでに社外取締役を選任している場合や社外取締役を選任する議案を提出する場合には不要。
3 株主総会で「相当でない理由」を説明しなければならない(改正会社法327条の2)。
上記1について施行日である2015年5月1日以後に監査役の監査を受ける事業報告については同日より以前に事業年度の末日が到来する会社(6月総会の会社は通常3月末日)であっても適用されることになっています。
また同様に上記2について施行日以後に招集の手続が開始された株主総会に係る株主総会参考書類の記載に適用されます。
この招集の手続きが開始されたというのは、株主総会参考書類の記載事項が取締役会の決議によって決定された時点を指すといわれています。

2015年6月に定時株主総会を開催する多くの会社にとって2015年5月1日までに事業報告について監査役の監査を受けることは実務上困難でしょう。
そのため、2015年6月の定時株主総会で社外取締役の選任議案を提出する会社であっても、社外取締役が選任されていなければ、事業報告に「相当でない理由」を記載しなければなりません。
また、上記3により株主総会で「相当でない理由」を説明しなければなりません。
多くの会社が6月の定時株主総会で社外取締役の選任議案を初めて提出すると予想されます。
そうすると社外取締役の選任理由の説明と「相当でない理由」の説明を同時並行的に行わなければならず、どう整合させるか工夫が必要になります。
この点について厳密に考えれば非常に難しいのですが、比較的簡単なものでいいという論者もいるので余り神経質にならなくていいと思います。
監査役会設置会社で今回初めて社外取締役を選任する会社は、「相当ではない理由」としては「会社の業務内容に通暁している候補者がいないために迅速な意思決定が阻害される」こと、選任理由としては「会社の業務内容に通暁している候補者であり、有益な意見が期待できる」などというのが考えられます。
また、監査等委員会設置会社に移行する会社は、「相当ではない理由」としては「会社の業務内容に通暁している候補者がいないために迅速な意思決定が阻害される」こと、選任理由としては「従来の社外監査役であり会社の業務内容に通暁しているため、有益な意見が期待できる」などというのが考えられます。
なお、本年3月5日に東京証券取引所が公表したコーポレートガバナンスコードでは「独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。」とされています(原則4-8)。
東証では、独立社外取締役を2名以上選任していない会社は本年12月末までにコーポレートガバナンス報告書でその理由を説明するように求めるようです。
上記の事業報告書、参考書類の記載や株主総会での説明のように「相当でない理由」の説明義務となるのかどうかは不明ですが、これに対する準備も必要となります。