搭乗者傷害保険と人身傷害保険の違い
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<ポイント>
◆被保険者が被保険自動車の搭乗者に限定されるか否か
◆保険事故が被保険自動車に関する事故に限定されるか否か
◆定額払いか実損払いか否か

交通事故のご相談・ご依頼を受けてときどき説明させていただくのが、搭乗者傷害保険と人身傷害保険の違いです。
誰が被保険者となるのか(保険金の支払いをうけられる人)、どのような事故が保険事故となるのか(保険の対象となる事故)、保険金をどのように算定するのかの観点から以下説明します。あくまでも一般論ですので、ご自身の加入されている保険にも当てはまるかについては、お手持ちの保険約款で、または保険会社(代理店)に問い合わせるなどしてご確認ください。

まず、被保険者(保険金の支払いを受けられる人)の観点から述べます。
搭乗者傷害保険では、被保険自動車(契約の対象として保険証券に記載された自動車)に搭乗している人(運転者も含む)が被保険者となります。これに対して人身傷害保険では、被保険自動車に搭乗している人だけでなく、被保険自動車に搭乗していない記名被保険者(保険証券に記載されている被保険者)やその家族も被保険者となります(家族の範囲は保険約款等でご確認ください。)。

次に、保険事故(保険の対象となる事故)の観点から述べます。
搭乗者傷害保険では、被保険自動車に関する事故しか保険事故となりません。典型例は、被保険自動車に搭乗中の衝突事故です。
これに対して人身傷害保険では、被保険自動車に関する事故はもちろんのこと、他の自動車に関する事故も保険事故となります。具体的には、他の自動車に搭乗中事故に遭った時や、歩行中に他の自動車にはねられた時も保険事故となります。

最後に、保険金の算定方法の観点から述べます。
搭乗者傷害保険では、契約で決められた定額の保険金が支払われます。死亡保険金、後遺障害保険金、医療保険金などがありますが、治療費や、収入、年齢などによって金額が変わることはありません。
これに対して人身傷害保険は実損を填補する傷害保険です。保険金は定額ではなく、治療費、休業損害、慰謝料などが約款で定められた基準にしたがって算出されて支払われます。収入や年齢によって金額が変わってきます。

このような算定方法の違いから、以下のような差異があります。
契約で定められた定額を支払うという搭乗者傷害保険の性質上、あまり知られていないものとして、シートベルト装着者に特別に支払われる保険金があります。
これはどのようなものかといいますと、シートベルトを装着した状態で事故に遭い、搭乗者傷害保険に基づいて死亡保険金が支払われるとき、死亡保険金のほかにその30パーセント(300万円が限度)が追加で支払われるというものです。
これに対して人身傷害保険にはこのような保険金は支払われません。

また、定額を支払うという搭乗者傷害保険の性質上、その保険金の支払いを受けたからといって加害者に対して請求できる損害賠償金から差し引かれることはありません。加害者に300万円の損害賠償請求ができるのであれば、搭乗者傷害保険の支払いを受けた後もなお加害者に対して300万円の請求ができます。
これに対して実損を填補するという人身傷害保険の性質上、その支払いを受けると加害者に対して請求できる損害賠償額が差し引かれることがあります。

搭乗者傷害保険と人身傷害保険の概略について述べましたが、参考になれば幸いです。