マンション管理組合の理事長の選解任について
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<ポイント>
◆マンション管理組合の理事長は区分所有法における管理者
◆理事長の選任手続について標準管理規約では区分所有法と異なる定めがなされている
◆理事会が理事長としての職を解いて理事に変更できるとの判断が最高裁でなされた

マンションの専有部分や共用部分について、区分所有法上どのように定められているか述べてきましたが、後述するとおり平成29年12月18日に最高裁が、マンション管理組合の理事長の解任に関する判断を示したことを踏まえ、今回は理事長の選解任について述べてみたいと思います。

多くのマンションでひな形として利用されている国土交通省の「マンション標準管理規約」では「理事長は、区分所有法に定める管理者とする。」と定められているので、まず、区分所有法で管理者の選解任についてどのように定められているかについて述べます。

区分所有法では、管理者を選任するか否かは自由です。また、管理者になるための資格要件もありませんので、管理組合の組合員(区分所有者)以外の者、たとえば賃借人やマンション外部の人でもなれると解されます。マンションに居住している必要もありません。
そして区分所有法では、規約に別段の定めのない限り集会の決議によって管理者を選任し、または解任できると定められています(さらに、管理者に不正行為などがあるときには区分所有者は裁判所に解任請求できるとも定められています。)。

これを受けてマンション標準管理規約では、管理者たる理事長の選任手続について、別段の定めがなされています。すなわち、管理者たる理事長を総会で直接選任するのではなく、理事を総会で選任した後、その理事の中から管理者たる理事長を理事会で選任すると定められています。

また、標準管理規約でも、マンションへの居住を理事長になるための資格要件としていませんが、ひな形として、管理組合の組合員(区分所有者)であることを資格要件とするバージョンと、管理組合の組合員であることを資格要件としないバージョンとが定められています。管理組合が区分所有者全員で構成される団体であることを重視すると、管理組合の組合員であることを理事長になるための資格要件とすることになりますし、マンション管理に関する専門的知識を有する外部の専門家を選任できた方がよいことを重視すると、管理組合の組合員であることを、理事長になるための資格要件としないこととなります。

ところがマンション標準管理規約では、理事会で理事長を解任してその役職を理事に変更できるかについては定められていません。
そこでこの点については、冒頭で述べた平成29年12月18日の最高裁判例が参考になります。
当該マンションの管理規約では、要約すると、組合員の中から理事を総会で選任した後、理事長を理事の互選により選任すると定められていました。しかし、標準管理規約と同じく、理事会の判断で理事長としての職を解いて理事に変更することができるかについては定められていませんでした。
最高裁は、理事長の選任についての当該規約の定めについて、「理事の互選により選任された理事長について理事の過半数の一致により理事長の職を解き、別の理事を理事長に定めること」も、総会で選任された理事に委ねる趣旨と解するのが区分所有者の意思と考えられる旨判示しました。すなわち、理事会の判断で理事長を解任してその職を解き、役職を理事に変更できることを示したことになります。標準管理規約を採用しているマンションにおいても同様の問題が生じた場合、参考になる判例と考えられます。