CGコードの2021年改定について(その1)

<ポイント>
◆改訂CGコードに対応したガバナンス報告書は本年12月末日までに
◆プライム市場上場会社に特有のものは来年4月以降の適用見込み
◆プライム市場上場会社は、独立社外取締役が3分1以上必要に

2015年6月から実施されているコーポレートガバナンスコード(本稿ではCGコードといいます)は、実施後も「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンスコードのフォローアップ会議」(以下「フォローアップ会議」といいます)の第1回会合が2015年9月に開かれ、その後も1ヶ月から数ヶ月毎に開かれてきました。
その中で、2018年3月の会合で改定案が提示され、それについての議論を経て、同年6月1日にCGコードの改訂が公表されました。
その後もフォローアップ会議は同様のペースで開かれ、2021年4月6日にフォローアップ会議によりCGコードの改訂案が公表されました。また、同月7日に東京証券取引所により「フォローアップ会議の提言を踏まえたコーポレートガバナンスコードの一部改訂に係る上場制度の見直しについて (市場区分の再編に係る第三次制度改正事項)」が公表されました。
これから2回に分けて改訂CGコードについて解説します。

今回の改訂は、2022年4月から東京証券取引所において新市場区分の適用が開始されることと密接な関係があります。
新市場区分では、現在の一部、二部、マザーズ・JASDAQ(スタンダード及びグロース)の5つの市場をプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編成することになります。
新市場区分の詳細は割愛しますが、改定CGコードとの関係では、プライム市場を「我が国を代表する投資対象として優良な企業が集まる市場」として、魅力ある市場になることが期待され、そのために一段高いガバナンスを目指して取組みを進めていくことが重要になるとされています。
上場会社は、本年12月までに改訂CGコードに従ったコーポレートガバナンス報告書(本稿ではCG報告書といいます)を提出することになります。
また、プライム市場上場会社にのみ適用される改訂CGコードの原則等に関しては、2022年4月以降に開催される株主総会の終了後にこれらが記載されたCG報告書の提出が求められるようです。

改定CGコードの改定に関する基本的な考え方として以下の4つが示されています。
「取締役会の機能発揮」、「企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保」、「サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組み」と「その他としてグループガバナンスの在り方や監査に対する信頼性の確保及び内部統制・リスク管理など」です。

「取締役の機能発揮」と「企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保」については、「第4章 取締役会等の責務」に殆どが記載されています。
原則4-8では、上場会社の独立社外取締役は従前と同じ2名以上の選任ですが、プライム市場上場会社においては、独立社外取締役を3分の1以上選任することになりました。
また、原則4-10の補充原則において、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない上場会社は、指名委員会、報酬委員会を設置して、適切な関与、助言を得るべきであるという点は従前どおりですが、プライム市場上場会社は、各委員会の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方等を開示すべきとされています。
さらに、同補充原則において、「後継者計画を含む」と括弧書きながら、それが経営幹部・取締役の指名に含まれる点が明記され、上場会社の指名委員会にはこの点を意識した審議等が必要となるでしょう。

以下、次号