課徴金の対象拡張など独占禁止法改正法案について

公正取引委員会が今通常国会に独占禁止法の改正法案を提出する見込みとのことです。
日経新聞2月15日朝刊などの報道に接している限度で、改正法案の内容をご紹介します。
まず、談合やカルテルの規制を一層強化すべく、これら「不当な取引制限」を行った企業に科される課徴金について、現行法では違法行為による売上額の最大10%(大企業たるメーカーの場合)とされているところ、改正法案では「主犯格」についてさらに1.5倍とします。また、課徴金算定の対象となる売上期間を現行の3年から5年にします。
反面で、違反企業からの自主的な情報提供を促すため、公取委の立ち入り調査などの前に、違反の事実を公取委に報告した企業に対し、課徴金の減免を受けられる企業数を現行の3社から5社に増やしています。しかも、グループ会社は1社として数えるとのことです。
さらにこれまで課徴金の対象となる違法行為は「不当な取引制限」と「支配型私的独占」に基本的に限定されていましたが、改正法案では次の違法行為まで拡張するとのことです。
(1)排除型私的独占(継続的に不当廉売を行うなどして競争者を市場から排除すること)この場合、課徴金は売上額の1~6%です。
(2)不当廉売(原価を著しく下回る対価など不当に低い対価で商品等を供給すること)
(3)差別対価(不当に地域や相手方によって差別的な対価で取引すること)
(4)取引拒絶(不当に特定の企業との取引を拒絶すること)
(5)再販売価格の拘束(商品の売り先に対し、その売り先の販売価格を定めて維持させること)以上の場合、課徴金は売上額の1~3%です。但し、(1)から(5)について課徴金が科されるのは、再違反の場合(詳細は報道では不明ですが、排除措置命令が一度出されたことがあるなどが要件と考えられます。)。
また、
(6)不当表示(景品表示法によって規制される「優良誤認表示」や「有利誤認表示」など)についても売上額の3%の課徴金が科されるとのことですが、対象製品の売上が1億円以上の場合に限られるようです。
さらに、
(7)優越的地位の濫用(自社の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、不当に、取引以外の商品などを購入させたり、自社のために金銭など経済上の利益を提供させたりして、相手方に取引上の不利益を与えることなど)についても売上額の0.5%の課徴金が科されるとのことですが、これも違反にかかる取引が20億円以上の場合に限られるようです。
また「不当表示」に消費者団体訴権制度を導入することも改正法案で盛り込まれているとのことです。この制度の概要は当メルマガ2007年7月15日号でご説明しています。
そのほか、排除措置命令など公取委の処分に対する不服申し立てを公取委が審査する「審判手続」については、「2008年度中に検討し、所要の措置を講じる」と附則で述べるにとどまっているとのことです。
課徴金を課す違法行為が不当廉売、優越的地位の濫用などの「不公正な取引方法」まで拡張されたことは、中小企業保護の目的もあるようです。折しも、不公正な取引方法の摘発強化のため、公取委が経済産業省などと協力して企業を調査する枠組みを作るとの報道がなされました(日経新聞2月27日朝刊)。
これもガソリンスタンドや建設業、酒販店などの業界から不当廉売などの取り締まりを求める声が強いことを受けたものとされており、今回の改正法案の目的の一つと軌を一にすると考えられます。