課徴金の対象拡張など、独占禁止法改正法成立

公正取引委員会が今年2月27日付で国会に提出していた独占禁止法の改正法案が、4月27日に衆議院の、6月3日に参議院の可決を得て成立しました。6月10日に公布され、「早ければ来年1月にも施行される見通し」とのこと(日経新聞6月4日付朝刊)です。

まず、談合やカルテルなどの「不当な取引制限」を行った企業に科される課徴金について、現行法では違法行為による売上額の最大10%(大企業たるメーカーの場合)とされているところ、改正法では「主導した事業者」についてさらに50%増しとします。
また、課徴金算定の対象となる売上期間を現行の3年から5年にします。
他方で、違反企業からの自主申請に基づく課徴金減免制度が功を奏していることに着眼し、自主的な情報提供をさらに促すため、公取委の立ち入り調査開始前または開始調査後に違反の事実を公取委に申請した企業で、課徴金の減免を受けられる企業数を現行の3社から5社(ただし、調査開始後は最大3社まで)に拡大しています。
しかも、同一グループ内の複数の事業者による共同申請を認める、つまりグループ会社は1社として数えることを可能にします。

また、カルテル・入札談合等の不当な取引制限の罪について、個人に対する懲役刑を現行法の3年以下から5年以下に引き上げられます。法人のみならず、実際に調整行為を行う個人に対する抑止力を確保するのが重要であるとのことです。

そして、これまで課徴金の対象となる違法行為は基本的に「不当な取引制限」と「支配型私的独占」に限定されていましたが、改正法では次の違法行為まで拡張するとのことです。なお、「支配型私的独占」とは「例えば,株式の取得や役員の派遣といった力関係にものをいわせたり,市場における地位を利用するなどの方法により,他の企業の事業活動に制約を加えること」です(公正取引委員会ホームページより)。
(1)排除型私的独占(継続的に不当廉売を行うなどして競争者を市場から排除すること)この場合、課徴金は売上額の1~6%です。
(2)不当廉売(原価を著しく下回る対価など不当に低い対価で商品等を供給すること)
(3)差別対価(不当に地域や相手方によって差別的な対価で取引すること)
(4)共同の取引拒絶(共同して不当に特定の企業との取引を拒絶すること)
(5)再販売価格の拘束(商品の売り先に対し、その売り先の販売価格を定めて維持させること)
 (2)から(5)については課徴金は売上額の1~3%です。同一の違反行為を繰り返した場合に限られます。
(6)優越的地位の濫用(自社の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、不当に、取引以外の商品などを購入させたり、自社のために金銭など経済上の利益を提供させたりして、相手方に取引上の不利益を与えることなど)については売上額の1%の課徴金が科されるとのことです。

その他、会社の株式取得の手続規制について、現行法では株式所有報告書の事後提出であったのを、合併等の他の企業結合と同様に、事前届出制を導入しました。他方で、届出を要する株式取得を株式発行会社(単体)の発行済株式総数の10%、25%、50%をそれぞれ超えるときとしていたのを、企業グル―プベースで20%、50%をそれぞれ超えるときとしました。
そのうえで、株式取得、合併等の届出基準を、現行法の買収会社(その国内親会社・子会社とも)の総資産の合計額100億円超、被買収会社の単体総資産の10%の場合としていたのを、買収会社(企業グループ)の国内売上高合計額200億円超、被買収会社(その子会社を含む)の国内売上高50億円超としました。中小規模の届出を免除することで、届出件数は現在の半分程度に減る見込み(日経新聞6月4日付朝刊)とのことです。

公取委自身が自らのした行政処分の是非を判断する審判制度について、経済界は廃止を求めてきましたが、改正法の附則では「(政府は)全面にわたって見直すものとし、平成21年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」としています。さらに、衆参両院の附帯決議として、「検討の結果として、現行の審判制度をそのまま存続することや、平成17年改正以前の事前審判制度へ戻すことのないよう、審判制度の抜本的変更を行うこと」を決議しています。