試用期間付き雇用契約の法律関係

わが国の企業では、従業員を採用する際、2~3ヶ月の試用期間を設け、その期間内にその試用社員の適性などを判断したうえ、正社員として正式に本採用するという制度が広く行われています。
試用期間付き雇用契約の法的性格は、その企業の労働協約、就業規則、慣行、当事者の合意などによって決まりますが、一般的には「解約権留保付き雇用契約」と解せられています(三菱樹脂事件最高裁判決)。
つまり、試用期間を経てその従業員に不適格の評価がなされた場合、使用者側はその者の本採用を拒否する権利があり、そのような権利を留保した雇用契約であると考えます。
試用社員のなかには、所定の試用期間の終了と同時に本採用される者と、本採用を拒否される者が出てきます。
本採用を拒否するのは、法律的には解雇と同じと解します。
試用期間だったからと言って、無条件に本採用を拒否できる、つまり解雇できるというわけではありません。
ただ、長く勤めた正社員を解雇する場合に比べてやや解雇しやすいと言うことはできます。
本採用を拒否するには、予定された職業能力や業務適格性が欠如しているとの客観的、合理的な評価がなされる場合でなければなりません。それが主観的な評価にならないよう、一定の基準などが設けられていれば好ましいと言えます。
職業能力や業務適格性以外の理由、例えば、思想信条、国籍などを理由とする本採用拒否は許されません。
ところで、通常正社員を解雇するには解雇予告が必要で、それをしないで即時解雇する場合は解雇予告手当を支払う必要があります。試用期間付き雇用契約の場合はどうでしょうか。
この場合も同様に扱われます。つまり、試用期間満了の30日前までに、本採用しないことを本人に通告しなければなりません。本人が次の求職活動をできるように時間的余裕が必要です。
次に、3ヶ月間を試用期間が決められているが、1ヶ月目で不適格性が明らかになったので、その時点で解雇予告をするということは可能でしょうか。この場合、試用社員は2ヶ月経過時に退職することになります。
従業員としては所定の最低3ヶ月間勤務する権利がある、最低2ヶ月間は適格性を観察してもらう権利があるとも言えます。
しかし、1ヶ月目に行った不適格性の判断が客観的、合理的なものと前提すれば、所定の試用期間を満了しなければ解雇できないとするのは双方にとって必ずしも好ましいこととは言えません。
試用社員側にとっても、どっちみち本採用されないのであれば、早く次の求職活動を開始した方がよいと考えられるからです。
従って、本人に特別な事情がないかぎり、試用期間満了前の解雇も可能であると思います。
本採用を拒否する場合、本人にその理由を告げるべきでしょうか。本人の希望があれば告げるべきです。