解雇が有効なのはどのような場合か
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企業が活動をするうえで、従業員の雇用に関するマネッジメントは、最大重要事項です。ところが、企業の経営者サイドの方は、意外にどのような場合に解雇ができて、解雇ができないのかをご存じない場合があります。そこで、今回は、解雇について若干ご説明いたします。
テレビドラマなどでは、社長が従業員に向かって「くびだ!」と怒鳴り、従業員はうなだれて家路に着く、というシーンを目にすることがあります。しかし、ドラマのように簡単に解雇できると思ったとしたら大変なことになります。
解雇をするには、それなりの理由が必要です。
ざっくりと言えば、よっぽどのことがない限り解雇はできない、と思っていただかなくてはなりません。
例えば、仕事の能率が悪い、他の従業員とうまくやっていけない、という従業員がいたとしても、解雇は簡単ではありません。なぜなら、従業員の教育は基本的には企業側の責任と解されるからです。もちろん、○○の企業で○年間にわたる経理の経験があることを理由に経理担当者として採用されたのに、それがまったくのでたらめで、全く経理ができない、というのであれば解雇の理由はあるでしょうが、新卒者として採用した人に対し、進歩が遅いからといって簡単に解雇はできないのです。
仕事上のミスについても、何度も同じミスを繰り返すからといって直ちに解雇はできないのです。ミスの度に始末書をとるなどして、きっちりとミスの内容を確定し、それでもミスが重なるようなら、次に同じミスをしたら解雇の可能性もあると文書で出して、それでも同じミスを繰り返した場合で、かつ、それらのミスが軽視しえないもので、これ以上教育したり配置転換したりしても無理であろう、という結論を裁判所が抱かない限り解雇は認められない場合が多いのです。
確実に解雇が認められる事案は、横領行為がある場合です。この場合は被害額が低くても即時に解雇が認められる場合がほとんどです。故意行為であるということと、行為が悪質であり、信頼関係の破壊が著しく、今後の継続的な関係を維持できないからです。
では、横領行為があった場合には、懲戒解雇も可能でしょうか。
懲戒解雇とは、企業側が従業員に対し、企業秩序違反の罰として労働契約を解消する行為をいいます。そう考えると、横領行為があった場合には、懲戒解雇が必ずできるようにも思いますが、懲戒解雇という制裁としての解雇を行う場合には(懲戒解雇の場合は退職金や解雇予告手当も受け取れません。)、就業規則で懲戒解雇となる場合を事前に明記しておかなければならないのです。
ですから、就業規則のない会社においては、退職金も解雇予告手当も支払わずに即座にやめさせる、ということはできないのです。
最近、悪質な従業員の中には、就業規則がないことをしりつつ、企業側に即時解雇を言わせるように仕向け、あとで解雇予告手当を請求するというような事があると聞いたことがあります。