自動運転レベル4の解禁と民事上の責任について
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<ポイント>
◆自動運転レベル4が2023年4月1日に解禁見込み
◆完全自動運転下の事故については従来と民事上の責任を負うべき者が異なる

 

自動運転レベル4の許可制度等が含まれる改正道路交通法が2023年4月1日に施行される見込みです。自動運転レベル4とは、簡潔に説明すると、限定領域(特定の場所・時間)における運転の完全自動化のことをいいます。自動運転レベルは5まであるので、上から2番目のレベルということになります。なお、自動運転レベル5は、領域を限定しない運転の完全自動化を指します。

本稿では自動運転レベル4の車両が発生させた事故の民事上の責任について解説します。主に国土交通省の公表資料(自動運転に係る制度整備大綱、報告書(自動運転における損害賠償責任に関する研究会)等)を参照していますが、過渡期の議論が含まれているため、内容が今後変更する可能性があることはご容赦下さい。

・運転手の民事上の責任を問うことは難しいと考えられる
自動運転レベル4では運転が完全自動化されるところ、完全自動運転下で発生した事故について運転手の民事上の責任を問うことは基本的には難しいと考えられています。責任を問うためには民法上、事故発生についての故意・過失が必要であるところ、完全自動運転下では運転手の故意・過失を認めがたいからです。

・自動車損害賠償保障法上の運行供用者責任の運用について
自動運転レベル4に限らず自動運転システム利用中の事故についても、従来の運行供用者責任を維持すると考えられています。運行供用者とは、自動車の運行を支配し、その利益を享受する者をいいます。もっとも分かりやすい例としては、会社の営業車が事故を発生させた場合、その会社は運行供用者に該当します。自動運転レベル4において、車両の保有者は運行供用者に該当します。
自動運転に係る制度整備大綱によると、運行供用者責任は維持しつつ、運行供用者責任に基づき賠償を行った者(保険会社等)から自動車メーカー等に対する求償権行使の実効性確保のための仕組みを検討するとされています。

・ハッキングにより発生した事故の責任について
ハッキングにより発生した事故について、基本的には自動車の保有者は運行供用者責任を負いません(保有者が必要なセキュリティ上の対策を講じておらず保守点検義務違反が認められる場合は別)。このように自動車の保有者が運行供用者責任を負わない場合に関しては、政府保障事業で対応することが妥当と考えられています。

・ソフトウェアの不具合により発生した事故の責任について
自動運転レベル4に限らず自動運転のために組み込まれたソフトウェアの不具合が原因で事故が発生した場合、その不具合が製造物責任法の解釈に基づき自動運転車の車両としての欠陥と評価される限り、自動車製造業者は製造物責任を負うと考えらえています。また、ソフトウェア関発者は、別途、不法行為責任を追及される可能性があるとされています。
なお、自動運転車については、車両の引き渡し後、車両に組み込まれたソフトウェアのアップデートが想定されますが、一般車と同様、上記の製造物責任法上の欠陥を判断する基準時は引渡し時となると解されています。アップデートによる不具合も当然想定されますが、アップデートに関する責任は技術的動向を踏まえた継続検討課題とされており、結論が出ていません。

・使用上の指示・警告と責任の所在
自動運転車の使用方法やリスクについて消費者が正しく理解するために、自動運転車には使用上の指示・警告が求められます。使用上の指示・警告が不適切な場合においては、製造物責任法上の「通常有すべき安全性」を欠いていると判断される場合がありえます。このような「通常有すべき安全性」と使用上の指示・警告等の関係については、技術的動向を踏まえた継続検討課題とされており、結論は出ていません。