社員に対する内部通報制度の説明、周知方法
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<ポイント>
◆内部通報制度の活性化のためには、社員への説明、周知徹底が必要
◆その際、経営トップの強いメッセージが効果的
◆社内報、イントラネット、小冊子・携帯カードの配布、研修等によって周知をはかる

内部通報制度を活性化するには、この制度の存在、内容、利用方法などを社員等に周知することが不可欠です。つまり、社内広報がこの制度の成否に大きく影響します。
現状、内部通報制度が一般的にまだ十分に活性化していない原因の一つは、社員等に対する周知徹底が不十分であるというところにあります。つまり、多くの企業において、社員はそういう制度の存在自体も、またそれを利用するように要請されているという自覚もほとんどない、というのが現実のように思われます。

まず、内部通報制度を周知する対象ですが、それは「内部通報の通報者となりうる社員等」です。
契約社員・派遣社員・パート従業員・アルバイトなどは通常その対象者に含まれます。関連会社社員や下請・取引先業者にまで及ぶかどうかは、その会社の内部通報制度がどのようなものとして制度設計されているかによります。(本連載第3回を参照してください。)
ちなみに、内部通報制度の活性化目標を社外に向かって広報することも会社にとって意味のあることです。コンプライアンス経営を標榜する企業であるとの宣伝に役に立ちます。

次に周知すべき内容ですが、とくに重要なのが経営トップのこの制度に対する姿勢です。
コンプライアンス経営にとってこの制度がいかに重要であるかについて、全社員にその自覚を促し、積極的に利用することを訴えるメッセージが発せられることが重要です。
そして、さらに次の2点が表明されれば、その会社の内部通報制度は活性化し、コンプライアンス経営に大きく寄与することになると思います。
社員が不正行為等に気がついているのに、「知らぬふり」や「見て見ぬふり」をすることは許されないこと、そして、内部通報を行った者について、「通報者探し」をすること、その社員に対するいやがらせ、いじめ、減点評価、意に沿わない転勤、解雇等の不利益を与えることを禁止することです。

次に、社員が不正行為等に気づいたときはいつでも内部通報が実行できるよう、その具体的方法、宛先、匿名の是非などを周知することが重要です。
社内窓口については、部署、メールアドレス、電話番号など。社外窓口(弁護士)については、事務所名、所在地、メールアドレス、電話番号、弁護士のプロフィールなどです。社外窓口である弁護士の顔写真や談話などを掲載している実例もあり、有効です。通報を受ける弁護士がどのような人物なのかを知らせることができれば、安心感を与えることもできます。

周知する方法としては、社内報等配布される文書、イントラネットによる伝達等があります。これらは一度や二度ではなく、繰り返し発信することが重要です。
また、内部通報制度の上記要点を記した、携帯用カードを作成し、これを配布するという周知方法があります。会社によっては、「コンプライアンス規範」を設けている場合もあり、合わせて「コンプライアンスカード」として社員に携帯させる実例もあり、効果的です。内部通報を思い立ったその時にアクションをとることを可能とするのです。

社員等を対象に内部通報制度に関する研修(Eラーニングを含む)を行うのも有用です。その講師としては法務部員のほかコンプライアンス部門担当者や社外窓口を担当する弁護士が適当です。
弁護士は、法律問題についての解説も可能であり、また経験した他社の内部通報の実例(もちろん守秘義務の範囲内で)を提供することもできます。またこういう機会に社外窓口の弁護士が実際の顔を見せることは、敷居が高いという感覚を緩和し、弁護士や内部通報制度に対し親近感を持ってもらう点からも有益です。
研修や情報提供は定期的に行ったり、またその内容をイントラネットなどで常時閲覧できるようにしておくのが望ましく、またわかりやすい小冊子にまとめて配布しておくのも役立ちます。

このように、内部通報の積極的利用をメッセージで促すのみならず、社員等の側から見て使い勝手のいい制度となるよう工夫を重ねることにより、コンプライアンス経営を真摯に目指すことの「本気度合い」が社員等に伝わるといえるでしょう。