社内窓口が内部通報を受けたときの対応
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<ポイント>
◆社外窓口経由の通報は弁護士を介して通報者とコミュニケーションをとる
◆通報者と協議し、社内窓口に限って匿名性を解除する方法もある
◆匿名通報の場合は自由に効率的、機動的調査を行うことが可能である

社内窓口が内部通報を受ける場合には2通りあり、内部通報を受けた社外窓口(弁護士)から報告を受けた内部通報と、社内窓口が直接受けた内部通報です。

前者、つまり内部通報を受けた社外窓口(弁護士)から報告を受けた場合について。
この場合、通報者の勤務部署・氏名等は社外窓口(弁護士)には明らかにされているものの(顕名)、社内窓口には知らされない、というのが通常です。通報者が、会社へはその氏名等を秘匿してほしい旨社外窓口(弁護士)に告げているからです。これを「会社への匿名」と呼ぶことにします。
「会社への匿名」の場合、社内窓口としては通報者と直接コンタクトをとることができません。必要な場合は社外窓口の弁護士を介してコミュニケーションをはかるしかありません。現に多くの場合、この方法で通報者からの聞き取りや事実調査が進められていきます。
ただ、このやり方は事実調査などに当たる社内窓口としては何かと不便で、非効率的です。そこで、社外窓口(弁護士)が仲介をして、通報者と社内窓口との間だけでは匿名を解除するか(会社の他の関係者には依然匿名を維持しつつ)、少なくとも直接相互連絡を取り合えるパイプ(知られていない携帯電話、メールアドレスの利用等)を設けることがあります。通報者と社内窓口との間の信頼関係が形成されることが条件でしょうが。

次に、通報者から社内窓口に直接内部通報が寄せられた場合について。
この場合には「匿名通報」(電話や手紙による)が相当割合あります。会社や団体によっては、匿名通報をそもそも認めないところもありますが、その場合でも、来てしまったものをまったく無視することはできません。「内部告発」に向かわせるのは適当でないし、一説によると、重大な通報ほど匿名で寄せられる傾向が強いとも言われます。
匿名通報がメールで寄せられた場合は、電話や手紙などと違ってまだ救いがあります。通報者が特定できなくても、メールバックやその後メールでのやりとりが可能だからです。そして、その過程で、上述した、社内窓口との間だけで匿名を解除する、という可能性もあります。

匿名通報を受理したときに困るのは、まず通報者が社員などルール上会社が想定している者かどうかの確認ができないことです。まったくの部外者(取引先や競合会社の関係者など)が社員になりすまして、虚偽や悪意の通報をしているのかもしれません。特定の社員や役職員を誹謗・中傷するものなどは要注意です。

次に、情報が限られているため、事実調査を行うに当たり、どの部署、どの社員を対象に聴き取り調査などを行えばよいのかわからないことです。
やむを得ないので、何か手がかりを探し、当たりをつけて情報を持っていそうな人物を対象にヒアリングを進めるしかありません。
通報者にフィードバックしたり、意向を聞いたり、是正措置を伝えたりする手段もありません。
そこで、問題が重大ないし深刻な場合(例えば、談合や贈収賄が疑われるような場合)は、非常手段として、社内報等で通報内容を広く広報して、ほかからの情報提供を促すという方法も考えられます。
顕名(「会社への匿名」を含む)の場合は、通報者の立場や意向を最大限配慮する必要がありましたが、匿名通報の場合は通報者自身がその利益を放棄しているとも言えるので、かえって自由に効率的、機動的な方法で調査を進めることができるという面はあります。

匿名通報と異なり、顕名による通報の場合は、前回説明した社外窓口(弁護士)の対応とほぼ同様となります。前回の記事も参照してください。
社内窓口の初期対応としては、できるだけ早く、通報者と連絡を取り、次の点を伝えることが必要です。
(1) 内部通報を受理したこと。受理しない場合はその旨。
(2) 今後の調査方法などについて適宜通報者に連絡すること。また、途中経過や是正処置などについても適宜報告すること。
(3) 通報者の方でも、追加情報や調査に関する意見を寄せてほしいこと。また、通報者の周囲で通報に関連すると思われる不審な言動が見られた場合や通報者探しが行われている気配が感じられた場合などはすぐに連絡してほしいこと。
(4) 事実調査に当たっては、それが内部通報に基づくものであることや、通報者が誰であるかなどが極力周囲に悟られないように進めるが、噂や邪推を含め100%阻止するとの保証はできないこと。
(5) しかし、会社として、通報者の立場や意向を十分踏まえて処理に当たるとともに、通報者が不利益を受けないように最大限の配慮を行うこと。