監査役会等独自の顧問弁護士採用の動き

<ポイント>
◆監査役会が独自に弁護士と顧問契約する例がでている
◆明文の規定はないが、独自の委任は可能であり、今後の広がりに注目

2016年4月4日の日経新聞で「監査役会、自前で法律顧問」、「存在感高める動き、徐々に」という記事が載っていました。
この記事によれば、横河電機の監査役会が2014年秋に弁護士と顧問契約をして、2015年には計10回の法律上の助言を受けたということであり、同社の2015年の株主総会招集通知、有価証券報告書やコーポレートガバナンス報告書にも内部統制システムの整備状況として、監査役会として弁護士と顧問契約を締結している旨の記述があります。
同記事では、横河電機以外にも、京王電鉄の監査役会、ヤフーの監査等委員会の例も紹介されています。

会社の顧問弁護士とは別に、監査役会、監査等委員会または監査委員会が独自に顧問弁護士と顧問契約を締結するのは、監査役会等は代表取締役などの業務執行を行う取締役や執行役を監査する等の役目であるため、業務執行担当者から日々相談を受けている会社の顧問弁護士に相談することが不適切な場合があるためです。
同記事では、株主から取締役の責任追求の訴訟を起こすよう株主から求められた場合の例を挙げています。
アメリカのサーベンス・オクスリー法(SOX法)に付随する規則では、監査委員会は、職務を遂行するために必要と判断した場合、外部の弁護士その他のアドバイザーを雇用する権限を有する旨の明文の期待があります。
日本には、監査役会等に弁護士雇用権限を規定した明文の条文はありませんが、大会社においては、取締役会で監査役等の職務の執行について生じる費用等の処理に関する方針、その他監査役等の監査が実効的に行われることを確保するための体制を決定することが義務付けられており、各社は、概ね、監査役会等による必要な資金の支出については積極的な姿勢を示しています。
また、監査役等は、取締役、執行役の違法行為を阻止するために裁判所に行為の差し止めを請求することも可能であり、その場合に弁護士に委任できることが前提と考えられます。
このように、監査役会等は、独自に弁護士に委任することができ、顧問契約を締結することも可能と考えられます。

このような動きと類似するのは内部通報制度における社外窓口です。
社外窓口は、通報内容によれば会社の業務執行担当者に対する調査及び処分の要請をする必要がある場合が生じる点で類似するところがあるといえます。
会社によっては顧問弁護士が外部窓口を担当するところもありますが、顧問弁護士とは別の弁護士と契約をして外部窓口を委託することもあります。
ただ、内部通報の外部窓口を顧問弁護士以外の別の弁護士に委託することはめずらしくありませんが、監査役会等が独自に弁護士と顧問契約を締結する例は非常に少ないものと思われ、今後、このような動きが広がるか注目したいと思います。