生前贈与のポイント
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生前贈与は、将来の相続財産の絶対量を減らすことにより、相続税の節税に役立ちます。
また、特例を活用すれば、さらに効果が高まります。
以下、要点を整理してみます。

【生前贈与のメリット】
(1) あげたい人に、あげたいものを確実に渡せる(相続時の争族の防止)。
(2) 贈与した資産は、その後に相続税の評価額がアップしても相続税に影響しない。
(3) 贈与は相続と異なり、自分の贈った財産がどのように使われるかを、自分で確認できる。
(4) 孫への贈与は相続を1回パスすることになり、「世代飛び越し効果」がある。

【一般贈与の計算】
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産を「財産評価基本通達」に従って評価し、課税価格の合計額から110万円の基礎控除額を控除した残額に贈与税率を適用して税額を算出し、翌年の2月1日から3月15日までに申告・納付します。

<設例>
Aさんは、6月に父から200万円、11月に母から100万円を贈与されました。
この場合の贈与税額はいくらになりますか。
回答{(200万円+100万円)-110万円}×10%=19万円

【節税分岐点】
贈与税率は、相続税率よりも相対的に高くなっていますが、贈与税をコントロールすることにより相続税負担よりも低く生前贈与できます。
財産が多い場合には、年間110万円の贈与では相続税の節税効果が遅く小さいものとなるので、図表を参考にして贈与財産の金額アップを検討するのも良いでしょう。

【贈与税の特例】
次の3つの特例は、政策的に贈与税の負担を大幅に軽減・免除または先送りする制度なので、是非、活用したいものです。
1、贈与税の配偶者控除
配偶者から居住用不動産の贈与を受けた場合は、基礎控除の他に2,000万円が控除されます。

<適用要件>
(1) 婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与であること
(2) 居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与であること
(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに受贈者の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みであること
(4) 過去に、今回の贈与者からの贈与について、この特例を受けていないこと

2、住宅取得等資金の贈与の非課税
平成23年12月31日までの間にその直系尊属から贈与により取得した住宅取得等資金について、非課税限度額(平成23年中は1,000万円)までの金額の贈与を受けた場合、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であるなど一定の要件を満たすときは、その非課税限度額までの金額は贈与税がかかりません。

3、相続時精算課税制度の選択
(1) 制度の概要
贈与税の課税制度には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合には、相続時精算課税を選択することができます。
この制度は、贈与時に贈与財産(特別控除後)に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時に精算するものです。
(2) 適用対象者
贈与者は65歳以上の親、受贈者は贈与者の推定相続人である20歳以上の子とされています。
(3) その他
贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はなく、特別控除額は2,500万円です。
なお、贈与者ごとに選択できますが、いったん選択すると暦年課税に戻せません。

【贈与税の注意点】
1、証拠を残しておく
(1) 預金通帳や証書等の名義を整合性のあるものにし、印鑑は贈与を受けた人が保管していること。
(2) 契約書によらない贈与はいつでも取消し可能(民法550条)です。
不安定な状況にならないためにも契約書は必ず作成すべきでしょう。
(3) 首尾一貫性
受贈した財産は、受贈者がその財産の管理等をするのが当然であるため、次の例のようにその首尾一貫性が大切です。
土地・・・固定資産税の負担
建物・・・固定資産税・火災保険料の負担
株式・・・配当の所得税申告
賃貸物件・・・不動産所得の申告

2、意思能力
贈与は契約であり、贈与者の贈与する意思と受贈者の贈与を受ける意思の両方があって成立します。
そこで、通常、中学生以上なら問題ありませんが、小学生以下の場合、祖父母からの贈与を受けた預金通帳や証書は、印鑑とともに両親が代わって受け取り、管理しておく必要があります。
ただし、一般的に小学生以下の場合、意思能力が備わっていないと判断されることがあるので注意が必要です。