災害等に遭った場合の税制の特例
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地震、豪雨災害や大型台風など、特に本年は大規模な災害が多く発生しています。
災害により被害を受けた結果、税務手続に影響が生じる場合には、申告や納付の期限を延長したり、納税を一定期間猶予する制度があります。

1.申告などの期限の延長
災害等の理由により申告・納付などをその期限までにできないときは、その理由のやんだ日から2か月以内の範囲でその期限を延長することができます。
(1)地域指定
災害による被害が広い地域に及ぶ場合は、国税庁長官が延長する地域と期日を定めて告示しますので、その告示の期日までに申告・納付などをすればよいことになります。
(2)個別指定
所轄税務署長に申告・納付などの期限の延長を申請し、その承認を受けることにより延長できます。届出書や申請書等の提出期限も同様に延長することができます。

申告等の期限延長の申請は、期限が経過した後でも行うことができますので、災害による被害を受けた方は、被災の状況が落ち着いてから、最寄りの税務署に相談すればよいことになっています。
なお、「災害等の理由のやんだ日」とは、災害が引き続き発生するおそれがなくなり、その復旧に着手できる状態となった日、その他の場合には交通通信の回復等申告や納付等の行為をすることが可能となった日のことをいいます。

2.納税の猶予
災害等により財産に相当の損失を受けたときは、所轄税務署長に申請をすることによって次のとおり納税の猶予を受けることができます。
(1)損失を受けた日に納期限が到来していない国税
①損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税
納期限から1年以内
②所得税及び復興特別所得税の予定納税や法人税・地方法人税・消費税の中間申告分
確定申告書の提出期限まで
(2)既に納期限の到来している国税
①一時に納付することができないと認められる国税
原則として1年以内

3.所得税の全部又は一部の軽減
地震、火災、風水害などの災害によって、住宅や家財などに損害を受けたときは、確定申告で(1)所得税法による雑損控除、(2)災害減免法による所得税の軽減免除のどちらか有利な方法を選ぶことによって、所得税の全部又は一部を軽減することができます。これら2つの方法には、次のような違いがあります。

4.住宅借入金等特別控除の適用期間の特例等
(1)適用期間の特例
災害によって被害を受けたことにより居住の用に供することができなくなった住宅用家屋(以下「従前家屋」といいます。)については、居住の用に供することができなくなった年以後の残りの適用年においても、引き続き、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます(その従前家屋の敷地を賃貸用として利用した場合などを除きます。)。
(2)重複適用の特例
被災者生活再建支援法が適用された市町村の区域内に所在する住宅用家屋を、その災害により居住の用に供することができなくなった場合には、その従前家屋に係る住宅借入金等特別控除と一定期間内に新たに住宅用家屋の再取得等をした場合の住宅借入金等特別控除を重複して適用することができます。
重複適用の特例を受けるためには、従前家屋について、その事実を明らかにする次の書類を確定申告書に添付する必要があります。
・従前家屋の被害の状況等を証する書類(り災証明書)(写し可)
・従前家屋の登記事項証明書(滅失した住宅については、閉鎖登記記録に係る登記事項証明書)(原本)
重複適用の特例を受ける場合には、それぞれの控除額の限度額のうち最も高い金額が控除限度額となります。

5.法人税の特例
(1) 災害損失欠損金の繰戻しによる法人税額の還付
災害のあった日から1年以内に終了する事業年度において、災害損失欠損金額がある場合には、その事業年度開始の日から1年(青色申告書の場合には2年)以内に開始した事業年度の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付を請求することができます。
災害損失欠損金額とは、棚卸資産や固定資産などについて災害のあった日の属する事業年度において災害により生じた損失の額のうち欠損金額に達するまでの金額をいいます。
(2) 災害損失金額がある場合の仮決算の中間申告による所得税額の還付
災害のあった日から6月以内に終了する中間期間において、災害損失金額がある場合には、仮決算の中間申告において、控除しきれなかった所得税額の還付を受けることができます。
災害損失金額とは、棚卸資産や固定資産などについて災害のあった日の属する事業年度において災害により生じた損失の額をいいます。
(3)被災代替資産等の特別償却
特定非常災害として指定された災害については、発生日から同日の翌日以後5年を経過する日までの期間内に、被災代替資産等の取得等をして事業の用に供した場合には、特別償却をすることができます。

6.消費税の特例
災害等が生じたことにより被害を受けた事業者が、当該被害を受けたことにより、簡易課税制度の適用を受けることが必要となった場合、又は受けることの必要がなくなった場合には、税務署長の承認を受けることにより、当該災害等の生じた日の属する課税期間から、簡易課税制度の適用を受けること、又はやめることができます。