法人税申告の改正ポイント
【関連カテゴリー】

令和2年3月期の法人税申告について、その改正ポイントをまとめます。

1.研究開発税制の見直し
基本となる「総額型」、外部機関との共同研究等が対象の「オープンイノベーション型」、上乗せ税額控除の「高水準型」がありましたが、高水準型が廃止、総額型及びオープンイノベーション型が拡充され、制度の整理が行われました。

2.特定事業継続力強化設備等の特別償却制度の創設
(1)制度の概要
いわゆる中小企業防災・減災投資促進税制といわれ、青色申告適用中小企業者が、中小企業強靱化法に基づく「事業継続力強化計画」等について経済産業大臣の認定を受け、当該計画に基づいて指定期間内に一定の設備投資を行う場合に、取得価額の20%の特別償却を認める制度です。
(2)対象の設備投資
中小企業等経営強化法施行規則の規定に基づき、自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する減価償却資産のうち、次のようなものが対象です(消防法及び建築基準法で設置義務がある設備並びに中古品を除く。)。
①機械装置
 100万円以上
 自家発電設備、排水ポンプ、制震・免震装置、浄水装置、揚水ポンプ等
②器具備品
 30万円以上
 制震・免震ラック、衛星電話等
③建物附属設備
 60万円以上
 キュービクル式高圧受電設備、配電設備、照明設備、貯水タンク、スプリンクラー、消火設備、防水シャッター等

3.みなし大企業の範囲の見直し
大企業のグループ企業で一定の要件を満たす法人は、「みなし大企業」として中小企業者等の優遇措置の適用対象から除外されました。
(1)みなし大法人
資本金又は出資金1億円以下の法人のうち、発行済株式等の2分の1以上を同一の大規模法人※に所有されている法人及び発行済株式等の3分の2以上を大規模法人に所有されている法人
※大規模法人
従来の資本金又は出資金1億円超の法人、資本又は出資を有しない常時使用従業員数1,000人超の法人に加え、以下の法人も大規模法人とされました。
 ・大法人(資本金又は出資金5億円以上の法人等)の100%子法人
 ・100%グループ内の複数の大法人に、発行済株式又は出資の全部保有されている法人

4.中小企業向け租税特別措置の適用除外措置
資本金1億円以下の法人で、前3年の平均所得が15億円を超える事業年度については、その事業年度は実態が大企業である法人であるとして、中小企業向けの租税特別措置が適用できなくなりました。
(1)適用不可となった主な税制(租税特別措置法)
①法人税の軽減税率(所得800万円まで特例税率15%)
②中小企業投資促進税制
③商業・サービス業・農林水産業活性化税制
④少額減価償却資産の損金算入
(2)今後も適用可能な主な税制(法人税法)
①法人税の軽減税率(所得800万円まで本則税率19%)
②欠損金繰越控除につき所得100%までの損金算入
③特定同族会社の留保金課税の適用除外

5.法人税率
中小企業者等(資本金又は出資金1億円以下の法人のうち、一定の要件を満たすもの)に対する軽減税率の特別措置(19%から15%に引下げ)につき、適用期間が2年間延長されました。結果、以下の税率が継続適用されることになります。
(1)大企業 23.2%
(2)中小企業者等
所得800万円まで(軽減税率) 15.0%
 所得800万円超 23.2%

6.中小企業の設備投資を支援する措置の延長等
 中小企業の設備投資を支援するための税制措置が、改正によりその適用期間が延長されました。
(1)中小企業経営強化税制
期限延長と同時に、働き方改革に資する設備(作業場等に設置される食堂、休憩室等の施設、テレワーク用PC、テレビ会議システム等)が対象設備に追加されました。
(2)中小企業投資促進税制
期限延長されました。
(3)商業、サービス業、農林水産業活性化税制
期限延長と同時に、経営改善見込について、認定経営革新等支援機関等の確認を受けることが要件に追加されました。

7.仮想通貨の取扱い
法人が有する仮想通貨につき、棚卸資産から除外され、売買目的有価証券に準じて取り扱うこととなりました。
(1)期末評価
活発な市場が存在するものについては、時価評価し、評価損益を益金又は損金に算入することとなりました。
(2)譲渡損益の計上時期
契約日の属する事業年度に計上されます。
(3)譲渡原価の算出方法
移動平均法又は総平均法が採用されます。
(4)信用取引を行った場合
譲渡により通常得るべき対価の額と買付けに係る対価の額との差額が譲渡損益となります。
(5)期末時点で未決済の信用取引がある場合
期末時点で決済したものとみなして計算した損益を認識することになります。