民法改正の振り返り(保証契約について)
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<ポイント>
◆保証契約について公正証書を作成すべき場合がある
◆極度額がない保証契約には注意が必要である

2020年4月にいわゆる債権法改正(民法改正)が施行され、保証契約に関するルールが大きく変更されました。施行から間もなく3年ということになりますが、この間に保証契約に関して数多くのご相談を頂きました。本稿では、私が相談を受けた中で、改めて注意をした方が良いと思ったことを記載します。改正に内容について網羅的に記載しているわけではないことをご了承下さい。

1 公正証書を作成すべき場合があること
民法改正により保証契約の締結に先立って公正証書を作成することが必要になるケースが生じました。具体的には、「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約」または「主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約」を締結する場合には、原則として、公正証書の作成が必要とされました。ただし、このルールには複数の例外があり、例えば、「主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者」が保証人の場合には公正証書の作成は不要です。したがって、実務上最も多いと思われる、事業のために法人が借り入れた債務をその法人の代表取締役が保証するというケースでは、公正証書の作成は不要になるのです。したがって、実際には公正証書の作成が必要になるケースというのはそう多くありません。もっとも、公正証書の作成が必要になるケースが存在するということは覚えておくべきです。
ただし、公正証書の作成が必要な場合とそうでない場合を網羅的に覚えるのは煩雑です。そこで、保証人が代表取締役の場合は公正証書の作成は不要だが、その他の者が保証人になろうとする場合には民法を確認する必要がある、と覚えておくのが良いように思います。

2 根保証の極度額について
民法改正により個人根保証契約(一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって、保証人が法人でないもの)においては、極度額(保証人が負担する債務の上限額)を定めなければならないとされました。この改正はよく周知されており、典型的な事例(例えば建物賃貸借に関する保証契約、身元保証契約等)ではきちんと対応できていることが多いと思います。そのため、注意をすべきは、上記のような典型的な事例以外でも、個人根保証契約に該当し、極度額を定めることが必要になるケースがある、ということです。保証契約を確認して、極度額の定めがない場合には、本当に個人根保証契約に該当しないかどうかをよく確認すべきです。