民泊 ~簡易宿所の基準緩和と新たな制度の検討~
【関連カテゴリー】

<ポイント>
◆厚労省と国交省の中間整理案が有識者会議で提示さ入れた
◆当面、旅館業法の簡易宿所の面積基準が緩和されて対応される見通し
◆17年の通常国会で、新たな枠組みの法案提出が目指される

「『民泊サービス』のあり方について」と題する中間整理が3月15日、厚生労働省と国土交通省から有識者会議で示され、大筋で了承されたとのことです。

まず、ここでは「民泊サービス」とは、住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部又は一部を活用して、宿泊サービスを提供するものと定義づけています。
総論的にいって、次のようなニーズがあると整理しています(必要性の議論)。
(1)急増する訪日外国人観光客の宿泊需要に対応するための宿泊施設の供給という観点
(2)空きキャパシティの有効活用という観点、
(3)多様な宿泊ニーズに対応した宿泊サービスの提供という観点
他方で、こうしたニーズに応えつつも、弊害を除去するための観点から論じられています(許容性の議論)。
(1)衛生管理面、テロ等悪用防止の観点から、宿泊者の把握を含む管理機能が確保され、安全性が確保されること、
(2)地域住民とのトラブル防止、宿泊者とのトラブル防止に留意すべきこと。
中間整理は、このような観点から、旅館業法等の現行制度における規制のあり方を見直し、仲介事業者等に対する規制を含めた制度体系を構築すべきである、とされています。
前者は概ね「早急に取り組むべき課題」としての整理されており、後者は概ね「中期的な検討課題」として整理されています。

「早急に取り組むべき課題」としては、当面、簡易宿所の枠組みを活用して、旅館業法の許可取得を促進すべきであるというのが基本方針です。
その背景としては、本来必要な旅館業法の許可を得ていない違法な「民泊サービス」が広がっていることに対応する必要があるという認識があります。
そのための具体的な規制緩和として、旅館業法の簡易宿所の客室面積基準を現行の33平方メートル(つまり10坪)から、宿泊人数が10人未満ならば、宿泊者1人当たりの面積を3.3平方メートル(つまり1坪)に設定して、宿泊者数に応じた面積基準(3.3平方メートル×宿泊者数以上)にすべきと書かれています。
また、家主不在ならば、宿泊者の本人確認、緊急時の対応体制などの管理体制を確保することを前提とし、旅館業法の許可対象とすべきとしています。
そのような管理体制があれば、「玄関帳場」の設置を要しないとすべきであるとしています。
他方で、そのような旅館業法上の規制緩和によって当面は対応することとし、許可を得ない違法な民泊サービスとの区別を明確する狙いもあるように思われます。無許可のケースが摘発の対象となることも考えられます。
4月から「簡易宿所」として営業許可を出すとも報道されています。

今回の中間整理でより注目されているのは、「中期的な検討課題」の方です。
ここでは「現行制度の枠組みにとわれない検討が必要である。」とされており、旅館業法上の許可取得などとは別の制度が検討されています。

「例えば」としつつも、一定の要件を満たす民泊サービスについて、許可制ではなく、届出制がとられることが検討されています。
その一定の要件として、家主居住で自宅の一部を貸し出すようなホームステイタイプの民泊サービスを緩和の対象として、営業日数、宿泊人数、面積規模などが一定以下のものを対象に限定すべきとしています。
この点については、一定のコンセンサスが得られているように読めます。
家主不在のタイプについては、簡易宿所の許可を取得させるべきという指摘と管理事業者を介在させて、家主に代わって一定の責務を負わせることで緩和の対象とできないか、という指摘が、両論併記のような書きぶりで記載されています。
なお、共同住宅については、賃貸マンションと分譲マンションで分けて考えるべきではないか、ともされています。
以上は、前述したようなニーズに応える範囲に関する議論です。

他方で、テロ等悪用防止のため、あるいは衛生管理面といった安全確保の観点からは、旅館業法上義務付けられている、宿泊者名簿の備付義務や最低限の衛生管理措置は求められるべきではないかと考えられるとされています。
また問題発生時において(行政が)適切に対応できるよう、報告徴収、立入検査等の家主に対する一定の行政処分が可能な枠組みが必要ではないかとされています。

さらに、民泊サービスでは、近隣住民とのトラブル発生が特に懸念されることから、旅館業法では課せられていない、トラブル防止のための措置や、トラブルがあった際の対応措置の検討が必要とされています。
この観点から、無断転貸や管理規約違反の問題があることから、賃貸借契約、管理規約に反していないことの担保措置を検討するべきとしています。

以上のような要件、制度を前提に、ムチの面として、旅館業法上の許可を受けずに営業している者については、罰金額の引き上げ、報告徴収や立ち入り調査権限の整備が併せて検討されなければならないとされています。

さらに、用途規制、民泊サービスの仲介業者についての一定の規制(サービス提供者が適法にサービスを提供していることの確認を求め、違法なサービス提供の仲介行為、広告の禁止等)の検討が必要とされています。
また、個人がサービス提供主体となる場合に、一定の要件を備えた管理事業者による管理・監督を求めることや、行政に対する指導体制の有り方など管理体制の確保の検討が必要とされています。

なお、国家戦略特区制度を今後どうするかは実施状況の検証結果を踏まえるとしています。

以上の諸点を踏まえた法規制の枠組みについて整理し、必要な法整備に早急に取り組む必要があるとされています。
報道によれば、有識者会議で今年の夏の最終報告の策定まで議論を詰め、2017年の通常国会への法案提出を目指すとされています。