業務委託契約による作業員の労働者性についての判例
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<ポイント>
◆労働者性は実態をみて判断
◆使用従属関係にあるか否がポイント
◆全体を総合評価して判断

企業からよくご相談を受けるもののひとつに、「この業務委託契約は労働契約と見られることはありませんか?」というものがあります。
業務委託契約であれば、私的自治の原則がほぼ全面的に認められ、契約内容に沿ってさえいれば条件面での問題が生じることは少ないのですが、労働契約ということになれば、労働基準法等の適用があり、法によって定められている労働者の権利を奪うことができなくなります。
たとえば、労働者と認められた場合、過去に反復更新された労働契約でその雇い止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められ、かつ、契約の更新について労働者が期待することに合理的な理由があると認められる場合には、雇い止め法理の適用を受けることになります。その場合、企業側が一方的に契約を打ち切ることはほぼ不可能になります。
ここで注意が必要なのは、契約書に業務委託契約と書いてあっても、労働者であるかどうかは、実態によって判断されるという点です。
そこで、どのような場合に労働者であると判断されるのかが重要になります。

今回は、業務委託契約を取り交わしたうえで、倉庫内において、製品を管理する業務や製品取り付け工事を工事施工業者に配分する業務等を行っていた作業員の労働者性が争われた判例(さいたま地裁平成26年10月24日判決)を解説します。

事案は、住宅のエクステリア製品等の製造販売を業とする会社の配送センター倉庫内において、業務委託契約に基づき、上記の業務に従事していた作業員が、契約の実態は業務委託契約ではなく労働契約であり、会社の行った業務委託契約の解約は不当解雇にあたり無効であると主張して、解約後の賃金の支払い等を求めて裁判を提起したものです。

裁判所は、「労働者」といえるかどうかは、当事者間の契約の名称や形式にかかわらず、その実態として、使用従属関係の下での労務の提供が行われていると評価できるか否かにより判断すべきであるとしています。
具体的には、①(ア)仕事の依頼及び業務従事への指示等に関する諾否の自由の有無、(イ)業務の内容及び遂行方法に関する指揮監督の有無、(ウ)時間的・場所的拘束性の有無、代替性の有無、ならびに、②時間給、欠勤の控除、残業手当の付与等、報酬の性格が使用者の指揮監督下に一定時間労務を提供していることに対する対価と評価できるか否か、等を総合的に考慮して判断するのが相当である、としています。

そして、本件については、①(ア)諾否の自由については、業務依頼を断ったことがないとしても、包括的な委託を受けて日々の業務に従事するという委託業務の性質上当然であり、指揮監督関係があったとうかがわせる事実ではない、としています。
次に、(イ)業務遂行上の指揮監督の有無については、作業員が自分の判断で業務を行っており、指揮命令や監督を受けておらず、出勤簿の提出はしていたが、作業時間については自己申告でありタイムカード等による正確な把握はしていなかったこと、具体的な業務について指揮命令や監督は受けていた事情が見当たらないことなどからすれば、作業員が会社の指揮監督の下に労務を提供していたと評価することはできない、としました。
さらに、(ウ)拘束性の有無については、一定の時間的・場所的拘束性が認められるものの、業務開始時刻は、構内作業員らの話し合いによって定められたもので、指揮命令・監督するために正社員と同じ業務開始時刻を定めたとは認められないことや、作業員はその日の業務が終われば業務終業時刻を待たずに帰宅することもでき、早退・遅刻する場合も含めて所長の許可はいらなかったこと、休憩時間も適宜休憩しており、業務時間中に長時間にわたって読書やジョギングなどをしていたことからすれば時間的拘束性はないと認められ、場所的拘束については、業務の性質上当然のものであって、業務の遂行を指揮命令ないし監督するためのものとは認められない、としています。
そして、(エ)代替性の有無については、倉庫内において同様の業務をしていた作業員の中には、屋号を使用して業務を請け負い、その業務の一部を自ら雇用した従業員に行わせている者がおり、業務を他の者を使用して行わせることが許容されていることからすれば、作業に代替性がなかったとまではいえない、としました。
②報酬の性格については、作業員に支払われる額は毎月定額であり、遅刻、早退、欠勤をした場合にその時間に応じて減額されていた時期があったことや、休日の業務については一日あたり一定額の支払いがあったことなどからすれば、報酬に労務の提供の対価としての性質を有していたことは否めないが、これらの支給額は所長との話し合いによって決定しており、就業規則との関連性も認められず、業務時間を正確に把握したうえで、それに応じて報酬額が決定されていたわけではなく、労働時間との対応関係がない、などの事実から報酬が労務の提供の対価として支払われていた事実を、労働者性を判断する際に重く見ることはできない、としています。
結論的としては、裁判所は、これらの事情を総合的に考慮して、作業員の労働者性は認められないとしました。

この事件下級審の判例でありますが、裁判における、労働者性の判断の枠組みや、具体的な事情がどのように判断されるかについて参考になると思われます。