暗号資産に対する個人課税
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「暗号資産(仮想通貨)」とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
(2)電子的に記録され、移転できる
(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
代表的な暗号資産には、ビットコインやイーサリアムなどがあります。
今回は、この暗号資産を個人で保有している場合にどのような課税がなされるかを確認します。

1.暗号資産を売却した場合
購入し保有しているだけでは課税されず、売却した際の売却益(譲渡原価を上回る価格で売却した場合の利益)に課税されます。
FXや株式の売却等で生じた利益は、他の所得と分離して課税する分離課税という方式で20.315%(所得税等及び住民税)の税率で税金が計算されますが、暗号資産はこれらとは異なり、雑所得として総合課税の方式で課税されます。
つまり、給与所得や事業所得等の他の所得と合計して課税されることになるため、所得が大きくなると、累進課税で税率が高くなります。
なお、売却により損失が出た場合でも、他の所得と相殺したり、損失を翌年以後に繰り越すことはできません。

2.確定申告不要の場合
年末調整で課税関係が完了しているケースなどで、他に20万円以下の所得がある場合には、その所得については、確定申告をしなくてもよいこととなっており、暗号資産についても同様です。しかし、医療費控除やふるさと納税等、他に確定申告をする事情がある場合には、暗号資産の売却益が20万円以下であってもそれを含めて申告することが必要です。

3.譲渡原価の計算方法
売却益の計算は、売却価額から原価を差し引きます。原価は、取得単価×売却した数で計算し、取得単価の算出方法は移動平均法と総平均法から選択します(選択しない場合は総平均法)。
(1)移動平均法
暗号資産を購入する都度、取得価額を計算する方法です。購入の都度、購入した金額の合計÷数量で計算、期末時点での取得価額を所得の計算に利用します。
(2)総平均法
1年間に購入した金額の合計÷1年間に購入した数量の合計=取得価額(単価)を期末にまとめて計算し、所得の計算に使用します。

4.計上可能な必要経費
取得価額には手数料のほか、暗号資産取引に直接的に必要な書籍代、セミナー費用やその交通費、専用のパソコン代なども計上できます。また、通信費や家賃なども家事関連費との割合を明確にすることで計上できる場合があります。

5.暗号資産を決済手段として利用した場合
暗号資産を決済手段として決済するという取引は、暗号資産をいったん売却し、その代金で商品やサービスを購入する取引とみなされます。暗号資産を売却しているため、その時点で暗号資産の価額が取得価額を上回っていれば、所得が発生し上記のように課税がなされることとなります。