新人事訴訟法について
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【新人事訴訟法の制定】
平成15年7月、離婚訴訟や認知訴訟、養子縁組の離縁など身分関係の形成や存否に関する訴訟手続に関し、人事訴訟法が新たに制定され、今年(平成16年)4月1日より施行されます。
今回は、その内容をご紹介したいと思います。

【人事訴訟事件の家裁移管】
これまでは、離婚訴訟や認知訴訟などのいわゆる人事訴訟について、他の金銭請求や不動産に関する事件などと同様に通常の地方裁判所が審理を行っていました。
今回の人事訴訟法の制定によって、人事に関する訴訟は全て家庭裁判所が審理することになりました。
このように、人事に関する訴訟は全て家庭裁判所に一本化することにより、どの裁判所に訴訟を起こせばよいのか利用者にわかりやすくなり、かつ、家庭裁判所の調査官のような専門的知見を生かした調査の結果を利用することができるようになりました。
同時に、例えば離婚事件における離婚の原因である不貞の相手方に対する慰謝料請求など、人事訴訟に関する請求の原因である事実によって生じた損害賠償に関する請求も、家庭裁判所であわせて訴訟提起することができるようになりました。
ただし、いままで管轄について一番批判が多かったのは、相続に関し、ある問題については地裁で、ある問題については家裁で、というふうに管轄裁判所が区々になったため、当事者がいろいろな裁判所をいったりきたりしなければならなかった、という点だったのですが、今回はその点についての解決は見送られました。
また、内縁解消や婚約不履行に関する損害賠償請求事件についても家庭裁判所への移管は見送られました。

【家庭裁判所調査官による事実の調査等】
離婚判決等と同時に行う、子の親権者・監護者の指定や財産の分与に関する処分については、家庭裁判所の調査官による事実調査を可能としています。
というのは、一般には、裁判というのは、基本的には当事者の主張立証に基づいて裁判所が判断を行うのが原則なのですが、離婚に伴う子の監護者や親権者の指定についての審理については、心理学等の専門家である家庭裁判所調査官による調査が必要な場合も少なくないため、人事訴訟法においては、離婚訴訟についても家庭裁判所の調査官に事実の調査をさせることを可能にしました。
これらの調査内容については、プライバシー保護のため閲覧の制限があり、事件の当事者であっても閲覧ができない場合もあります。

【参与員制度の拡充】
人事訴訟においても、これまで家事審判において導入されていた参与員制度と同様の制度を導入することになりました。
職業裁判官以外の一般人から選任された参与員から、人事訴訟の審理の過程でその意見を聞くことにより、審理及び裁判に国民の良識を反映することができるように期待されています。

【訴訟上の和解等による離婚・離縁】
これまで、離婚や養子縁組の離縁においては、裁判上での和解により離婚や離縁の効力を発生させることができず、別途届出が必要でした。
届出が記載の不備等により受理されない場合もありえることから、金銭の支払がある場合など、当事者や代理人としては届出が受理されるまで神経を遣うことがありました。
しかし、今回の改正により、訴訟上の和解により、離婚や離縁の効力を発生させることができるようになり、手続が簡明になりました。