役員と会社間の金銭消費貸借の留意点
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同族会社においては、会社とその役員との間で様々な取引が行われています。
税法では、課税の公平や経済的合理性の見地から一定の規制を行っているので、今回はこの中でも金銭の貸借について、Q&Aで整理してみます。

【会社が役員にお金を貸す場合】
Q
同族会社甲は、社長の不動産購入資金の一部に充てるため、500万円を社長に貸し付けました。
利息は、どうしたらよいですか。

A
まず、会社と社長との間で「金銭消費貸借契約」を締結し、その次は、利息の問題となります。
1、契約上のポイント
会社が役員にお金を貸す場合には、少なくとも契約書に次の事項を明記しておく必要があります(図表1参照)。
(1) 当事者の氏名
(2) 貸付金額と交付日
(3) 返済期限・返済方法
(4) 利率
(5) 契約日

2、適正な利率
会社は、利益の追求を目的とする営利法人ですから、経済的合理性の観点から無利息は認められません。
仮に無利息だと、税務上は未収利息として認定課税されます。
適正利率としては、実際の調達金利以上か、貸付をした日の属する年の前年の11月30日現在の日本銀行が定める基準割引率に年4%の利率を加算した利率(現在4.30%)によります。

3、会社法上の問題
会社が、その役員との間で金銭消費貸借契約を締結するという行為は、会社法上、会社とその役員との間の「自己取引」となります。
したがって、会社が役員にお金を貸す場合には、あらかじめ、その自己取引について、取締役会の承認を得ることが必要になります(図表2参照)。

4、無利息でもよいケース
次のような場合には、役員に対して無利息または低利による貸付があったとしても、適正な利息との差額が「給与」とされることはありません。
(1) 災害、疾病などにより、臨時的に多額の生活資金が必要になった役員に対して行う貸付
(2) 適正な利率と実際の貸付利率との差額分の利息の金額が、会社の一事業年度当たり、5千円以下である貸付

【役員が会社にお金を貸す場合】
Q
役員が会社の資金繰りを支援するため貸付をした場合には、利息はどう取り扱われますか。

A
次の2点がポイントです。
1、原則金利不要
個人の場合は、会社と異なり常に経済的合理性に基づいて取引をするものではありません。
したがって、役員が会社にお金を貸し付けても、“当然、利息を徴収すべき’という考え方は取られませんので、特殊事情がない限り認定課税はないと思われます。

2、利率が高いケース
役員に対して、通常より高い利率により利息を支払った場合、適正な利息部分については支払利息となりますが、それを超える部分は法人税の計算上「役員報酬」とみなされ、会社側にその役員報酬に対する源泉徴収の問題が発生します。
また、この役員報酬とみなされる金額を加えたところで、その役員報酬が過大であるかどうかが判定されることになります。