大震災と労働法
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<ポイント>
◆直接の被災による休業の場合、原則として給与や休業手当は支払う義務なし
◆震災が原因の休業については、「不可抗力」だったか否かで判断
◆完全月給制をのぞき、欠勤遅刻はノーワークノーペイ

今回の東日本大震災の影響で通常の業務ができない会社が多数あります。
これに関連して当事務所にも複数の相談がありましたので、この場合の労働関係について何点か説明したいと思います。
なお、休業に関しては厚生労働省のHPにより詳しい解説があり、今回の記事はその解説を参照しています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014tr1-img/2r98520000015fyy.pdf

Q1
今回の震災で、工場などが被害を受けて操業できない場合、あるいは計画停電により操業できない場合、休業中も従業員の給与等を支払う義務がありますか。

A1
休業した場合の給与の取り扱いについて、労働基準法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合」には平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないとされています。
ただし、天変事変等の不可抗力は、「使用者の責に帰すべき事由」に当たらず、休業手当の支払義務はありません。
ここでいう不可抗力とは、(1)その原因が事業の外部より発生した事故であること、(2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること、の2つの条件を満たす必要があると解されています。
今回の震災で工場などが被災してその結果操業ができない場合や、停電のため操業できない場合には不可抗力であると考えられますので、原則として、休業手当の支払い義務はありません。
なお、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合であるかないかにかかわらず、従業員に対し休業手当を支払う場合には、雇用調整助成金や中小企業緊急雇用安定助成金制度があり、休業手当の一部を助成してもらうことが可能です。
詳しい手続きは厚生労働省のホームページを参照してください。

助成金に関する厚生労働省のホームページ
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/a-top.html

Q2
今回の震災により取引先や輸送手段が被害を受け、原材料の仕入れや製品の納入などが不可能となったために休業する場合、休業手当は支払う必要がありますか?

A2
A1に記載したように、不可抗力による休業の場合には支払う必要はありません。
具体的には、取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、会社側の休業回避のための努力等を総合的に判断して不可抗力かどうかが判断されます。

Q3
電車の運休による従業員の欠勤や遅刻があった場合、給与はどのような考え方で支払えば良いのでしょうか?

A3
まず、いわゆる完全月給制の場合には、欠勤や遅刻に関係なく一定額の月給が支払われる給与体系ですので、通常通りの支払いをすることになります。
その他の場合(月給制や、日給制、時間給制の場合)には、ノーワークノーペイの原則に従い、所定労働時間のうち働いていない日や時間については、その分の給与を差し引くことになります。
但し、就業規則や労使慣行で別の定めや運用をしている場合には、従前の定めや運用に従うことになります。