地位確認訴訟 -日本経済新聞社事件-
【関連カテゴリー】

平成16年12月20日、東京地裁において、日本経済新聞社の子会社の不正経理問題で、当時の経営陣の責任を追及した株主代表訴訟につき、和解が成立しました。また、株主代表訴訟を提起していた元部長が、自分が懲戒解雇されたことについて、懲戒解雇の無効を訴えて地位確認訴訟を提起していましたが、この件も同日和解により解決しました。
今回は、この事件について、懲戒解雇と地位確認訴訟にスポットをあてて解説したいと思います。
懲戒解雇とは、企業側が従業員に対し、企業秩序違反の罰として労働契約を解消する行為をいいます。
本件については、名誉毀損が主な理由で懲戒解雇処分がなされたようです。
本件については、元本部長は、名誉毀損行為については、真実の内容とは異なる内容を公表して、鶴田元社長らの名誉を毀損したことを認めて謝罪しています。
しかし、従業員としての地位については、日経側は同時に懲戒解雇処分を撤回し、元本部長の社員としての地位を確認する、としています。
和解は双方の妥協(法律的にはかっこよく「互譲」といいますが)の産物ですので、この和解が成立したことをもって、元部長について客観的に懲戒解雇事由があったかなかったかを即断することはできませんが、裁判所関与の下でこのような和解が成立したということは、懲戒解雇処分に何らかの問題があったという印象は与えると思います。
懲戒解雇をいったん行って、結局それを撤回するということは、会社にとってマイナスイメージになる場合があることに注意が必要です。
また、日経は元本部長に対し、懲戒解雇処分以降の分の給与を支払う和解内容になっています。
これは懲戒解雇が無効とされたり、撤回された場合には、通常付される内容です。
本件ではおよそ9か月分の給与が支払われることになります。
実際には働いていないのに給与が支払われるというのはちょっとおかしい気もしますが、元本部長は働く意思があったのに、日経側が懲戒解雇をしたので働くことができなかった、ということがその理由です。
法律的には、元本部長が労働することによって従業員としての債務を履行したのに、日経側がその受領を拒絶したことになり、日経側の給与支払という反対債務は消滅しないことになる、と説明されます。
訴訟が長引けば、それだけ給与を支払わなければならなくなりますので、企業側は解雇処分を行う際にこのリスクも考える必要があります。