労働時間管理について
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<ポイント>
◆労働債権の時効が2年から3年になり未払い残業代の請求額が増加する可能性
◆裁量労働制等を利用している場合は適正な運用となっているか確認
◆労働時間の適正なカウントが重要

民法改正に伴い、2020年4月から労働債権についての時効期間が3年となりました(従前は2年)。いずれは他の債権と同様に5年となる予定です。
その結果、未払いの時間外手当が請求されると、現段階で従前の1.5倍、将来的には2.5倍の額を支払うことになります。
当然のことですが、その場合の計算の手間暇も同じように増加することになります。
これらのことから未払い残業代(時間外手当)の請求がされないよう適切な措置を講じることがさらに重要になっています。

では、企業は、時間外手当の未払いを発生させないためにどのようなことに留意すればよいのですしょうか。

まず、変形労働時間制、フレックスタイム制などの法定労働時間の枠を柔軟にする制度を利用している企業は、その制度が有効とされるような適正な運用をしているかをチェックし、適正な運用がなされていない場合は是正する必要があります。
特に変形労働時間制については、期間中の労働時間等をあらかじめ特定する必要があるところ、それをしていない企業が散見されますので、この点特に注意が必要です。

次に事業場外労働のみなし制や裁量労働制などの労働時間の算定に関する特則を利用している企業は、それらについて正しい運用がなされているかを検討する必要があります。
事業場外労働のみなし制については、事業場外で業務に従事し、かつ、労働時間の算定が困難な場合について、所定労働時間労働したものとみなすことができる制度ですが、就労実態等の具体的な事情から労働時間の算定が客観的に困難であることが必要です。
また、裁量労働制については、労使協定締結の手続き等に加えて、実際に労働時間が労働者の裁量にゆだねられている必要があります。
これらの要件を満たしていない場合には、それらを満たすか、それが無理であるならばこれらの制度に基づく労働時間管理を改める必要があります。

さらに、現実の労働時間を適正にカウントする必要があります。
掃除や朝礼、手待ち時間等も企業の指揮命令に従っている場合は労働時間ですし、仮眠時間も一定の対応が求められており労働からの解放が保障されていない場合には労働時間と解されます。
タイムカード等を使用している場合には、その出退勤の時間がカウントされている労働時間と齟齬がないかについても注意を払う必要があります。
齟齬がある場合は客観的に合理的な説明ができるものなのかを確認する必要があります。
時間外労働について自己申告制や上司による承認制をとっている場合でも、実態として時間外に労働に従事しており、そのことを会社が黙認していたと認められる場合には、労働時間としてカウントされることになるので、その点も注意が必要です。
労働時間の適正なカウントはほかにも着替え時間をカウントするかどうかなど、いろいろな論点がありますが、これまでに労働者から不満が出ていないからといってそのままにするのではなく、適正なルールに従ったカウントがなされているのかについて企業側で積極的に検証する必要があります。