労働契約法制定へ
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【労働契約法制定へ】
厚生労働省は、労使間で労働条件等を定める際の基本的なルールや手続きを定めた「労働契約法」(仮称)の制定を目指す方針を決めました。
2007年にも法案を国会へ提出する予定とのことです。
労働契約法の制定が論議されている背景としては、企業を取り巻く経営環境の変化などから、解雇や労働条件の引き下げ等に関する個別の労使紛争が増加していること、労使紛争が増加している理由として、労使関係に関するルールについて、法律で直接規定されずに判例に委ねられている部分が多く、近年の労働契約をめぐる状況の変化に対応できていないことなどがあります。
現在、労働関係についての紛争は、最終的には裁判の形をとらざるをえず、その際、労働者側も使用者側もそのために多大な労力と時間が必要となります。
また、労使紛争の結論が法律で明確に定まっておらず、これまでに形成された抽象的な判例法理によって定まるため、経済状況が変化するなかで、当事者にとって結果の予測が難しいという問題もあります。
今般、労働契約法を制定し、労働契約に関するルールを明確化することによって、労使当事者が実質的に対等な立場で自主的に労働条件を決定することを促進し、紛争の防止を図ることが期待されます。

【労働契約法とはどのような法律か】
では、労働契約法とは、どのような法律なのでしょうか。
現存する労働基準法とは別個に、民事上のルールを定める法律と言われています。
ただし、現在の労働基準法についても見直しを行い、労働契約法と労働基準法とが共働して、時代の変化に対応した適正な労働関係を実現することを目的にしています。
以下に具体的な内容を説明します。

【労使委員会の整備】
労働者側が半数以上となるよう構成された労使委員会を常時設置し、時間外労働や就業規則の変更などをめぐる労使協議の場とすることにしました。
これは、労働組合の組織率が低下し、集団的な労働条件決定システムの機能が低下していることから、その役割を補い、労使が対等な立場で機動的に話し合いができるよう整備される制度ということができるでしょう。

【解雇の金銭的解決】
いったんなされた解雇が無効とされた場合、現在は、使用者側は労働者を職場に復帰させる必要があります。
しかし、いったん感情的にこじれてしまった事案では、職場復帰は双方にとって負担が多い場合が多く、真の紛争解決にならない場合も散見されました。
そこで、使用者が労働者に金銭を支払う制度を整備することで解雇紛争を解決する制度が提案されています。
今のところ解決金額等を労使があらかじめ協議しておく案などが浮上しています。
ただ、国籍や性別などを理由とする解雇では金銭解決は認められないとされています。

【雇用継続型契約変更制度】
雇用継続型変更制度とは、労働者が雇用を維持したうえで、労働契約の変更の合理性を争うことを可能にする制度です。
この制度の設置も労働契約法の内容とされています。
賃金の引き下げなど、労働者に不利益な労働条件の変更が提示された場合に、労働者が退職することなく、労働条件の変更について争うことを可能にする制度です。
新たな労働条件を受け入れなければ、労働条件についての合意ができていないという理由で職場にいられなくなる、それを避けるためには使用者側の言いなりになるしかない、ということを防ぐための制度です。

【その他】
その他、出向や転籍の場合のルールや、試用期間の上限の設定、労働者が雇用主からの退職勧奨を受け入れても一定期間クーリングオフが可能になる、などのルールの制定が予定されています。