再度の民法大改正!物権法等について(第3回)~所有者不明土地管理命令等~
【関連カテゴリー】

<ポイント>
◆所有者不明土地に対処するために所有者不明土地管理命令制度新設された
◆所有者不明土地に利害を有する者であれば同制度を利用できる

現在、所有者が誰か判明しない土地(土地が共有の場合は共有持分(以下同じ))、所有者が判明してもその所在が不明で連絡が付かない土地(本改正ではこれらを「所有者不明土地」といいます)が全国各地に増加し、公共事業や民間事業等の妨げとなっています。公共事業や民間事業を進める際に必要な土地が所有者不明土地であるため、事業そのものがストップしてしまうようなケースがあります。その主な原因は、相続により土地所有者がねずみ算式に増加するケースがあること、相続登記の申請が義務ではないため不申請が少なくないこと、都市部への人口集中により地方を中心に土地の所有意識や利用ニーズが低下したこと等にあると言われています。
本民法改正においては(1)所有者不明土地の発生予防と、(2)既に発生している所有者不明土地の利用の円滑化の両面から現行法の見直しがなされたのですが、本稿では(2)に関する新制度、新規定を解説します。

本民法改正により「所有者不明土地管理命令」(以下「本命令」といいます)に関する規定が新設されました。所有者不明土地について利害関係人の請求を受けた裁判所が、必要があると認めるときに、請求に係る土地を対象として、所有者不明土地管理人による管理を命ずることができるという規定です。なお、同様の規定が建物についても新設されました(所有者不明建物管理命令制度)が、所有者不明建物管理命令制度の仕組みは所有者不明土地管理命令制度とほぼ同様ですので、以下では代表して所有者不明土地管理命令制度を解説します。

本命令により選任された所有者不明土地管理人には、本命令の対象となった土地やその土地上の動産(所有者が判明している動産を除く)を管理処分する権利が専属します。所有者不明土地管理人は、自己の裁量で土地の保存行為や土地の性質を変えない範囲内の利用又は改良行為を行うことができ、これらの範囲を超える行為(土地の売却など)も裁判所の許可を得れば行うことができます。

改正法においては本命令を請求できる「利害関係人」の範囲が特定されていません。そのため、利害関係人に該当するかどうかは事案ごとに裁判官が判断することになります。もっとも、一般論で言えば、所有者不明土地が適切に管理されないために不利益を被るおそれがある隣接地所有者や、その土地を取得してより適切な管理をしようとする公共事業の実施者や民間の買受希望者が利害関係人として想定されていると言われています。このような利害関係人が本命令により所有者不明土地管理人を選任してもらい、同人に土地を適切に管理してもらう、同人から土地を売却してもらうということです。もっとも、このような隣接地所有者が土地の買受希望者であれば必ず利害関係人に該当するわけではありません。所有者不明土地に関する具体的事情によって、隣接地所有者の中にも不利益を被るおそれがある者とそうでない者があり得るので、隣接地所有者が一律に利害関係を有するとはいえません。また、土地の買受希望者についても、その希望の強弱や代金の支払能力などにおいて様々な場合があり得るので、一律に利害関係と判断されるわけではないでしょう。本命令を申し立てる場合には、自身が利害関係人に該当することをきっちり立証する必要があるといえます。
自身が利害関係人に該当するかどうかを知りたい場合や利害関係人に該当することを立証する方法を知りたい場合はぜひ弁護士にご相談下さい。