再度の民法大改正!物権法等について(第1回)~改正経緯と共有について~
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<ポイント>
◆多数持分共有者から共有物を使用する少数持分共有者への明渡請求が可能に
◆共有物を使用する共有者への対価の償還請求が明文化

令和3年4月21日に「民法の一部を改正する法律案」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案」が可決され、同月28日に公布されました。平成29年の債権法改正、平成30年の相続関係改正に続くものです。施行は、原則として公布の日から2年以内とされています。
令和3年改正は、「相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」、「所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み」を主たる目的とするものといえます。
そのため、相続登記の申請の義務づけや所有者(共有者)不明の場合に裁判所の許可を得て必要な行為ができるようなった等の改正がされました。
ただ、所有者不明土地問題を解決するためだけではなく、その解決を契機として、所有者(共有者)が明らかな場面における共有、相続、相隣関係等についても改正されています。
まずは共有について、今回と次回に報告します。なお、本連載は、紙面の都合上、改正箇所を網羅的にカバーするものではないことにご留意ください。

共有物の使用について変更されました。
たとえば共有不動産を共有者の一人が使用している場合、その使用者の共有持分の割合に関わらず、他の共有者から明渡請求はできないとされていました。それが可能だと、使用する共有者の持分に応じた使用権を奪うことになるためです。
また、上記場合、他の共有者は使用者に対して金銭請求等の請求ができるかどうかについては明文の規定はありませんでした。ただ、最高裁は、このような場合、不法行為に基づく損害賠償請求または不当利得返還請求をすることができるとしていました。
従来、共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格にしたがって、その過半数で決することになっており、その点の改正はありません。
しかし、今回の改正では、共有物を使用する共有者がいる場合にも多数持分共有者による管理事項の決定、すなわち使用者の変更を含む利用方法の変更が可能になりました。
ただし、共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならないとされました。「特別の影響」とは、共有物の利用方法を変更する必要性、合理性と変更による使用者の不利益を比較して、使用者が受忍すべき範囲を超える場合といわれています。
共有物を使用する共有者に対する対価の償還請求についても明文の規定により認められることになりました。不法行為、不当利得の要件を充足するかどうかを検討する必要がなくなったといえるでしょう。

共有物に変更を加える場合、従前と同様に、他の共有者の同意を得なければなりませんが、この「変更」には、形状又は効用の著しい変更を伴う場合を除くことが明文化されました。
形状又は効用の著しい変更を伴わない場合は「管理」に関する事項として持分割合にしたがって、その過半数で決することになりました。
短期賃借権等の設定も同様の方法で可能になりました。たとえば、建物の賃借権は3年間以内とされていますが、借地借家法の適用のある建物の場合には、普通借家契約は対象外であり、3年間以内の定期借家契約等が対象となると解されます。
管理に関する事項について、期間を定めて賛否を明らかにするよう催告したのに賛否を明らかにしない者がいる場合、申立てを受けた裁判所がさらに1ヶ月以上の期間を定めて賛否を明らかにするよう催告したのに賛否を明らかにしないときは、その者以外の共有者の持分割合にしたがって、その過半数で決する旨の裁判が可能となりました。
保存行為については各共有者ができることは従前と同じです。
また、共有物の管理については、共有者が選任する管理者の制度が新設されました。管理に関する事項を、その都度共有者が協議して決定する煩わしさを避けられることになります。管理者が選任されても、共有者が管理に関する事項を決定した場合には管理者はそれに従う義務があります。

共有物の分割については、改正前は、現物分割を原則として、それができないとき等には競売によることとされていました。しかし、実務では、共有物を単独所有にし、それに伴う持分割合を超えた分の対価を支払わらせるという方法も取られていました。
改正法では、このような方法による共有物の分割も明文で認められることになりました。
共同相続人がいる相続財産は遺産分割手続きが必要であることは従前どおりですが、相続開始から10年を経過したときは共有物分割手続きによることが可能になりました。
相続人が共有物分割手続きに反対することは可能ですが、裁判所から通知を受けた日から2ヶ月以内に異議の申し出をしなければなりません。