住友電工男女差別訴訟で和解
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住友電気工業の女性社員2人が「昇格や賃金などで差別を受けた。」として、同社と国に対し男性社員との差額賃金分や慰謝料など計約1億5000万円の支払を求めた訴訟で、平成15年12月24日に和解が成立しました。内容は、同社が2人を昇格させ、各500万円の解決金を支払うというものです。さらに、国との関係では、企業が実質的に性別で雇用を管理していないかに十分な注意を払うことや、男女格差についての紛争があった場合、積極的に調停を行うことなども盛り込まれました。
平成7年に訴状が提出され、平成12年に一審判決が出ました。その内容は住友電工の男女格差の存在を認めて「性別による差別を禁止した憲法の趣旨に反する。」としつつも、「入社した当時の社会状況では違法とはいえない。」として、原告の請求を全面的に棄却したものでした。原告はこれを不服として大阪高裁に控訴しました。
大阪高裁の井垣裁判長は異例ともいえる長文の和解勧告文を示し、和解を呼びかけました。和解勧告文には「国際社会では男女平等の実現に向けた取り組みが進められている。」「過去の社会意識を前提とする差別の残滓を容認することは社会の進歩に背を向けることになる。」などと記されています。
この訴訟は和解で終了したものであり、判決としては第1審の原告敗訴判決のみが残った形になります。しかし、和解内容としては、住友電工に解決金の支払いを認めた内容であり、しかも、請求内容にはしていなかった(おそらくできなかった)昇格という内容を組み込んだものであり、実質的に原告側の勝訴といえます。裁判長としては、一審判決だけが先例として残ることを避けるために、高裁で判決がでたとしても、原告の請求がある程度認められたであろうことを示唆するためにも、あのような和解勧告文を示したのかもしれません。いずれにせよ、この判決は同種の賃金格差訴訟にも少なからぬ影響をあたえるものであると考えられ、今後の動向が注目されます。