会社法の法務省令が公布されました

今年5月に施行が見込まれる会社法の法務省令が2月7日、公布されました。
「会社法施行規則」、「会社計算規則」、「電子公告規則」の3つの法務省令です。前二者はそれぞれ条文数が、238条、194条とボリュームも相当大きいものです。
会社法の条文には「法務省令で定めるもの」、「法務省令で定めるところにより」などの文言が随所にありますが、これは、会社法で規定すべき内容のうち、技術的・細目的な事柄については国会が内閣(その一員たる法務大臣)に権限委譲して政令として決めさせるという意味です。このような委任事項に限らず、「その他の会社法の施行に必要な事項」をも規定しています。
会社法が昨年7月公布された後、法務省は法務省令案を取りまとめて11月29日公表し、12月28日まで広く意見を募集した上で、さらに検討を加え、3つの法務省令として制定、今回の公布に至りました。なお、法務省令案として公表された「株主総会等に関する法務省令案」、「株式会社の業務の適正を確保する体制に関する法務省令案」等の内容が、法務省令では「会社法施行規則」に含まれるなど、法務省令案がかなり整理されたものとなっています。

会社法施行後における企業法務の具体的な指針としてその内容は詳しく検討しておく必要があります。企業では既に法務省令案の段階で検討がなされているようですが。
前置きが長くなりましたが、ここでは「会社法施行規則」(以下では施行規則とします。)についてその主なポイントをピックアップしてご紹介します。

(1)親会社・子会社の定義
施行規則は子会社、親会社の定義として「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」との文言を用い、さらにその具体的内容として、議決権のみならず、役員の数、契約関係、融資の関係等も判断基準としています(3条、4条)。証券取引法に基づく財務諸表等規則で規定された内容とほぼ同一の基準が会社法上も取り入れられたということになります。

(2)株主総会
施行規則は株主総会に関する技術的・細目的事項を詳細に規定しています。株主総会等を招集する際に決定すべき事項(63条)や、株主総会参考書類(64条、73~93条)及び議決権行使書面等の記載事項(66条)、議事録の記載事項(72条)などです。また、株主総会において取締役が説明義務を負わない場合を明らかにしました(71条)。説明のために調査が必要な場合(事前に株主が説明を求める事項を通知している場合などを除く)、説明をすることで他の者の権利を侵害することとなる場合、同一の事項について繰り返し説明を求める場合などです。

(3)内部統制システム
会社法は大会社(資本金5億円以上又は負債200億円以上)に対しいわゆる「内部統制システム」の整備を義務づけています(348条3項4号)が、施行規則はそのシステム(体制)の内容を概ね次のように規定します(98条、100条。委員会設置会社について112条)。
1.取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
2.損失の危険の管理に関する規程その他の体制
3.取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
4.使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
5.当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

(4)社外役員に関する事業報告への記載など
施行規則は事業報告(従来の営業報告書)への記載事項も詳細に定めています(117~127条)。中でも、会社が社外取締役又は社外監査役(まとめて「社外役員」と規定されています。)を選任した場合は、その社外役員が他の会社の業務執行取締役等であるときは、その事実と、当社とその「他の会社」との関係、他にも社外役員を兼任している場合もその事実を記載しなければなりません(124条)。外部からのチェックが期待される社外役員が適任かどうかを株主が判断するための情報を提供する趣旨です。
なお、会計監査人設置会社においては、会計監査人の報酬等の額、その他、会社と会計監査人との関係を示す種々の事実を事業報告に記載しなければなりません(126条)。

(5)買収防衛策に関する事業報告への記載(127条)
株式会社がその財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めている場合、その基本方針の内容と、その実現のための取り組み内容を事業報告に記載しなければなりません。
そして、その基本方針に照らして不適切な者によって株式会社が支配されることを防止するための取り組みを事業報告に記載しなければなりません。つまり、買収防衛策の株主への開示が義務づけられるということです。
そして、このような基本方針実現への取り組み、買収防衛策が次の要件に合致しているかについて経営陣(取締役又は取締役会)の判断と理由をも記載しなければなりません。
イ.基本方針に沿うものであること。
ロ.株主の共同の利益を損なうものでないこと。
ハ.会社役員の地位の維持を目的とするものでないこと。

(6)ウェブサイトによる開示
そのほか、事業報告、株主総会参考書類の記載事項の一部について、ウェブサイトで開示することで、書面による提出が省略できるようにしています(94条、133条3項)。

その他、施行規則には極めて詳細な内容が盛り込まれています。実務でどのように実施するか、複雑な段取りが要求されることになります。