中小企業退職金共済制度の改正ポイント―同居親族のみ雇用事務所の従業員も対象に―
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中小企業退職金共済制度の一部が改正され、平成23年1月1日から施行されています。
中小企業をはじめ適用対象が広いと思われますので、以下、ポイントを整理してみます。

【改正の趣旨】
これまで、中小企業退職金共済制度(中退共制度)が適用される「従業員」の範囲については、労働基準法等が適用される労働者の範囲と同様であると整理されてきました。
しかし、雇用・経済情勢が特に悪化し、退職後の従業員の生活保障の重要性が改めて認識される中で、事業主と生計を一にする同居の親族を雇用する事業に雇用される者であっても、使用従属関係が認められる者が存在することが明らかになりました。
そこで、同居の親族のみを雇用する事業に雇用される者であっても、使用従属関係が認められる同居の親族については、中小企業退職金共済法の「従業員」として取り扱うことになりました。

【概要】
1、特徴
(1) 掛金が定額制
月額5千円~3万円の範囲の16種類の中から選択(短時間労働者には、この他、月額2千円~4千円の3種類の特別掛金も選択)できます。
(2) 全額損金算入
掛金は、全額事業主負担ですが、全額損金算入できます。
(3) 国の助成
初めて加入する企業や掛金を増額した企業に一定期間、掛金の一部が助成されるなど、他の企業年金にない特色があります。
(4) 退職金は直接従業員に
退職金は、中退共本部から退職した従業員に直接支払われます。
事業主が従業員に代わって受け取ることはできません。
退職金は、一時払いの場合は退職所得、分割払いの場合は公的年金等控除の対象となる雑所得として取り扱われます。

2、加入時の手続き
(1) 退職金共済契約申込書による確認
・同居の親族のみを雇用している事業所であるか否かの確認(新規申込時)
・加入させる従業員が同居の親族か否かの確認(新規・追加申込時)
なお、同居の親族のみを雇用している事業所であるか否かについては、中退共制度への加入実態ではなく、雇用実態で判断されます。
(2) 同居の親族が使用従属関係のある従業員であることを確認するための書類の提出
・同居の親族が、事業所に雇用される者で、賃金を支払われる者であることを確認できる書類
・同居の親族が小規模企業共済制度の共済契約者でないことを誓約する書類

3、過去勤務期間
過去の勤務期間(中退共制度加入前の勤務期間)については、新規申込時までの継続して雇用された期間で、最高10年間を通算期間とすることができますが、過去に小規模企業共済制度に加入していた場合には、その期間は通算できません。

4、掛金助成の対象外
同居の親族のみを雇用する事業所の場合は、掛金の負担を軽減する措置「新規加入助成」の対象とはなりません(図表参照)。
また、新規加入時に同居の親族のみを雇用する事業所が、同居の親族以外の従業員を雇用する事業所になった場合は、その旨の届出があっても新規加入助成の対象にはなりません。
なお、新規加入時に同居の親族以外の従業員を雇用する事業所であって、新規加入助成の対象となっていた事業所が、同居の親族のみを雇用する事業所になったときは、届出が必要です。
この場合は、新規加入助成の対象から除外され、助成額は打ち切りとなります。

5、加入中に必要な届出
(1) 事業所の雇用実態に変更があった場合
同居の親族のみを雇用する事業所が、同居の親族以外の従業員を雇用することになった場合、または逆の場合
(2) 加入している従業員のうちの同居の親族について変更があった場合の届出
同居の親族でなかった従業員が、同居の親族となった場合、または逆の場合
(3) 同居の親族についての定期的な確認
中退共本部へ使用従属関係確認のための一定の書類の提出

6、退職時の手続き
同居の親族の退職時の届出には、次の書類の添付が必要です。
(1) 当該同居の親族が、事業所に雇用される者で、賃金を支払われる者であったことを確認できる書類
(2) 退職の事由を証する書類