上場会社の株式取得に関する「5%ルール」

前回(平成16年4月1日発行の第6号)、株式公開買付け(TOB)について説明しましたが、今回はTOBに関連してよく言われる「5%ルール」について述べます。
会社が上場して株式を公開した場合、誰が株式を取得して株主になっても構わない旨の意思表明をしたのと同じであり、本来、株式市場を通じた株式の取得であれば、誰がどれだけ株式を取得してもそれ自体何らの制限を受けないのが原則です。
しかし、株式市場における株式の取得であっても、何らの規制がない状態では弊害が生じることがあり得ます。
たとえば、ある者が上場会社の株式を徐々に買い集める場合、株価は徐々に上昇していきます。経営陣は、誰が、何のために、株式を買い集めているのか不安になり、その後株式を買い集めた者が判明した場合、経営陣は自らの地位を守るため、買い集められた株式を自ら高値で買い戻して今まで通りの経営を維持しようとする可能性があります。その場合、株式を買い集めた側は、一般投資家には得ることのできない莫大な利益を得ることになります。
このようなことが野放図に行われれば、一般投資家による株式市場の信頼を失わせることになりますし、買い集めによる株価の上昇と経営陣の買戻しによる株価の急下降、株式の品薄による株価の乱高下によって、一般投資家が予測できない損害を被ることにもなります。
そこで、上場会社の発行済み株式等の5%以上を取得した者は、証券取引法27条の23により、大量保有報告書を内閣総理大臣に提出する義務があるとされています。
かかる「5%ルール」違反には刑事罰が課せられており、平成14年11月8日、中華レストラン「東天紅」の株式公開買付け(TOB)をめぐり、発行済み株式の20%近い同社株を保有しながら大量保有報告書を提出しなかったという事件で、被告人である株式取得者に対して懲役2年、執行猶予4年、罰金600万円の判決がなされています。