ブランド商品についての国際取引終了時の在庫について
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<ポイント>
◆国際取引きにおいては、終了時に在庫に関する取り決めが重要
◆在庫の取り決めはバライティに富んでおり、自社に有利な組み合わせを選択すべき

本年4月24日の日経新聞に紳士服ブランドのバーバリーが長年の三陽商会との契約を解消して、日本で直営店の展開を本格化する方針であるとの記事がありました(ただし、三陽商会は、同社が発表したものではなく、現時点では決まったことはないとしています)。
あるブランドを保有する会社が海外進出をする際にとる戦略として、相手国のパートナーを販売代理店にしてそのブランド商品を輸出する場合があります。「代理店」という場合、単に代理、取次ぎ等をする場合を指すことが一般的ですが、本稿の「販売代理店」はブランド商品を買い取って自国市場で売却する企業をいうものとします。
また、相手国のパートナーに自社ブランドのライセンスを与えて、パートナーであるライセンシーがそのブランドの商品の製造販売をする場合があります。
ライセンス契約の場合には対象となる品目についてその国、地域で独占的(exclusive)に商品の製造販売できる権利が与えられるのが通常です。ただし、商品の企画段階で商品のデザイン等についてライセンサーの承認が必要とされることが一般的です。
また、販売代理店契約の場合にも独占的な販売権が与えられることはむしろ多いと思います。
ライセンス契約、販売代理店契約において、独占的権利が与えられた場合、最低販売量を定めて、販売量がその量を下回った場合にはライセンシー、販売代理店に何らかのペナルティを課したり、契約内容を変更できるようにすることが多く行われています。
この独占的権利が与えられた場合、当該国、地域においてブランド保有者がブランド商品の販売権を有する場合と有しない場合がありますが、後者であっても一定の条件(たとえば販売量が一定量以下の場合)が満たされればブランド保有者も販売権をもつようになる場合もあります。

販売代理店、ライセンシーの市場開拓により相手国で一定の認知がされてブランドとして価値が高まった場合、ブランド保有者は代理店契約、ライセンス契約の更新を拒絶して、自らブランド商品の販売をしようとする場合があります。
また、相手国市場におけるブランドの浸透スピードや販売戦略などに不満をもち、自ら市場開拓に乗り出す場合もあります(新聞報道によると今回のバーバリーのケースはこれに類似するケースのようです)。
そのほか、契約更新にあたり代理店またはライセンシーに更新料の支払能力がなく、また、他に相手国に支払能力のある適当なパートナーを見つけられない場合もあるでしょう。
このような場合、契約は期間満了により終了することになりますが、大きな問題の一つは契約期間満了にあたりライセンシーが製造した、また、代理店が輸入したブランド商品の在庫の処分です。

在庫の処分の方法は契約で定められていることが一般的です。
最も多い例は、契約終了後も一定期間(たとえば6ヵ月)はブランド商品の売却を可能とするものです。ライセンス契約の場合、ロイヤリティを支払うことになります。
また、ブランド保有者がブランド商品を買い取る場合もあります。この場合、ブランド保有者が買取義務を負う場合とブランド保有者が買取りを希望した場合に買取権をもつ場合があります。
また、ブランド保有者がブランド商品の全部を買い取る場合と選択した商品のみを買取ることができる場合があります。
ブランド保有者がブランド商品を買い取る場合の買取価格は予め決まっていることが多いようです。
この買取価格が市場価格より著しく低い価格に設定されている場合、ライセンサー、販売代理店は損失を被る可能性があります。
その他、ライセンサー、販売代理店にブランド商品の廃棄やブランと保有者が指定する第三者への譲渡を義務付ける場合もあります。
多くの契約書では、これらの在庫処分の規定は組み合わせて用いられることになります。
たとえば、ライセンサー、販売代理店は、ブランド商品を6ヶ月間販売できるが、ブランド保有者が買取りを求めた場合には予め決められた額で売却するというものです。
また、ブランド保有者が買取りを求めた分のみをブランド保有者に予め決められた価格で売却し、残りは廃棄処分するというものもあります。

契約終了にあたって在庫商品の処分の規定が明確でない等により紛争が生じることもあり、その場合には契約書で定めた準拠法(どの国の法律を適用するか)、裁判管轄(どの国の裁判所で裁判するか)が重大な意味をもってきます。通常はブランド保有者の国の法律を準拠法とし、同国の裁判所を管轄裁判所とすることになっていると思います。
その場合、ライセンシー、販売代理店は、外国の裁判所で外国の法律により裁判をしなければならず、大きな負担を強いられます。外国の裁判所での紛争解決を余儀なくされることのないよう、契約にあたっては、在庫商品の処分の規定をよく吟味し、可能な限り明確なものにしなければなりません。