サステナビリティ情報の開示等について

<ポイント>
◆有報に「サステナビリティに関する考え方及び取組」欄が新設
◆新たな欄には「ガバナンス」と「リスク管理」の記載が必須
◆女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女賃金の差異の開示が必要な場合もある

2023年1月31日に企業内容等の開示に関する内閣府令が改正(公布・施行)されました。また「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」も改正され、「記述情報の開示に関する原則(別添)-サステナビリティ情報の開示について」等が公表されました。
これらの改正等の背景の一つには2021年6月の改訂CGコードがあり、上場企業の取締役会は、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深め、基本的な取り組み方針を策定するべきとされていることがあります。
上記の改正等により、サステナビリティに関する内容を有価証券報告書(縮めて「有報」といいます)に記載することとなり、2023年3月31日以降に終了する事業年度に係わる有報から適用されることとなっています。
以下、上記の改正等により有報に記載することになった内容について、網羅的ではありませんが、紹介していきます。

有報の「第一部企業情報」の「第2事業の状況」の中に「サステナビリティに関する考え方及び取組」という新たな記載欄が設けられました。
同欄に記載する4つの要素のうち、「ガバナンス」(サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続)、「リスク管理」(サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、及び管理するための過程)については記載しなければなりません。
残り2つの要素である「戦略」(短期、中期及び長期にわたり連結会社の経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組)、「指標及び目標」(サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する連結会社の実績に長期的に評価し、管理し、及び監視するために用いられる情報)については、重要性に応じて記載を求められています。
ただし、人的資本(人材の多様性を含む)に関するものについては、重要性判断にかかわらず、「人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針」及び同方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績の記載は必要です。
なお、上記開示原則により、「戦略」と「指標及び目標」は重要性がないとして記載しない(上記必要事項を除く)場合でも、その判断根拠等の開示をすることが期待されるとされています。

有報の「第1企業概況」の「5従業員の状況」において、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女賃金の差異の開示が新たな記載事項となりました。
これらは、連結会社を構成する会社が、女性活躍推進法または育児・介護休業法の下で公表を行わなければならない場合に開示が必要となっています。
なお、投資者の理解が容易になるように任意の追加的な情報を追記することも可能とされています。

有報の「第4提出会社の状況」の「4コーポレート・ガバナンスの状況等」の「(1)コーポレート・ガバナンスの概要」において、取締役会、委員会等の活動状況が新たな記載事項となりました。
取締役会及び委員会等の活動状況として、「開催頻度」、「具体的な検討内容」、「個々の取締役又は委員の出席状況等」についての開示が求められます。
上記の委員会等については、指名委員会等設置会社の指名委員会や報酬委員会だけではなく、それ以外の会社が任意で設置する指名・報酬委員会等も含まれます。
なお、任意の委員会は企業において様々なものが設置されることがありますが、指名委員会等設置会社の指名委員会や報酬委員会に相当するもの以外は開示を省略することができます。
また、「(3)監査の状況」において内部監査部門が代表取締役のみならず、取締役会や監査役(会)に対しても直接報告を行う仕組みの有無を含む内部監査の実効性を確保するための取組みについて、「(5)株式の保有状況」において政策保有株式について当該会社との間における営業上の取引、業務上の提携等を目的がある場合には、その概要について、開示が求められることとなりました。