ゴルフ場に対する預託金返還請求について(その3)~相続の視点から

<ポイント>
◆ゴルフ会員権と相続の問題
◆ゴルフ場を相手にして裁判所に訴訟提起すべきか?

 

1 ゴルフ場に対する預託金返還請求について、いくつか記事を書かせていただきました。これは、民事再生手続を経ていないゴルフ場については、会員の高齢化に伴い、再び預託金の返還請求について問題が増えているように感じます。
2 相続を考えたときに、会員権のまま相続させるようとすると、名義変更の手数料が問題になります。ゴルフ場により対応は異なりますので確認が必要ですが、数十万円の名義変更手数料がかかることが多いです。相続する者もわざわざ年会費のかかる会員権を相続したくないと考える方も少なくありません。
また、会員権を譲渡により換金しようとしても、自分が出した預託金以上の値段で売却できることはなく譲渡はあきらめざるを得ないことがほとんどであるように思います。
3 そうなると、ゴルフ場に対して預託金の返還を請求することを検討せざるを得なくなります。
私が関与させていただいた事件では、まずは依頼者自身で交渉を試みるものの、ゴルフ場から返金する旨の回答を得られることはなく、むしろ、例えば500万円の預託金に対して50万円を分割で支払うから、50万円を支払ったら残りの450万円を免除してほしい、という合意書を送付してくることもあります。
会員の立場からすれば、500万円預けていたのに、50万円しか返せないとの回答で納得できるはずがありません。
また、あるいは理事会決議により据置期間を延長した等の主張をして支払いを拒んでくることもありますが、会員が同意しない限りはその決議に拘束されないと考えてよいと思います。
いずれにせよ、ゴルフ場は一部または全部の支払いを拒む回答をしてきますが、こうした対応は、結局、一人でも多くの会員からの預託金返還請求を減額してもらい、また分割弁済をお願いせざるを得ないというのが本音だからです。
民事再生手続を経ていないゴルフ場については、会員の方が個別に交渉したところで返還されることは稀といえます。
4 それでも返還を求めるのであれば、会員としては訴訟提起をせざるを得なくなります。訴訟手続となると1年近い時間もかかりますし、弁護士費用もかかることから、どうしても躊躇われる手続です。しかし、それもゴルフ場は想定済みです。
最終的に訴訟提起すべきかどうかは別に考えるとしても、置かれた状況によって対応の仕方は異なりますので、まずは弁護士に相談して、自分に何ができるのかを確認してから判断すべきではないかと考えます。
お気軽にご相談いただければ幸いです。