「黄金株」について(その1)
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今回は「黄金株」についてご説明します。最近よく耳にしますが、法律で使われている言葉ではありませんし、きちんと定義されているわけでもありませんが、一般的には、合併などの重要な案件を拒否することのできる株式を意味します。
新しい会社法で、普通株式には譲渡制限がついていない場合でも、譲渡制限のついている種類株式を発行することができる旨の明文の規定が入った(108条)ことから注目されるようになりました。つまり、普通株式を上場している会社が、その経営陣と友好的な企業や人に譲渡制限付きの「黄金株」を発行することにより、企業防衛をはかることが容易になったのです。

以下、もう少し詳細にみていきます。
まず、「黄金株」も他の株式と異なる権利を有する種類株式の一種です。
種類株式としては、かつては利益配当や残余財産の分配についての優先株式(明治32年商法改正)、劣後株式(昭和13年商法改正)が認められていただけですが、その内容は徐々に拡張されました。
平成13年商法改正では、議決権を行使できる事項につき内容の異なる株式を発行できることとなり、かつ、株主総会や取締役会で決議すべき事項について、その決議の他に種類株主総会の決議を必要とする旨を定款で定めることができるようになりました。
これによって、現行の商法においても「黄金株」の発行は可能となりました。たとえば合併や営業譲渡等についてのみ議決権を有する株式1株を発行し、かつ、これらの事項について種類株主総会の決議が必要であると定款で定めれば、その種類株主総会で決議しないことによって、重要案件を否決することができるのです。「黄金株」複数株を複数人に発行していれば、「黄金株」の種類株主総会の決議、すなわち同種類株主の過半数の決議によって決まることになります。

このような「黄金株」の発行については、株式譲渡制限会社でなくとも可能でした。しかし、譲渡制限会社でない会社では「黄金株」も自由に譲渡できるので、経営陣としては「黄金株」が敵対者に渡るリスクを意識せざるを得ませんでした。
新しい会社法では、種類株式として「譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること」を内容とする種類株式を発行できるようになりました(108条1項4号)。これと従前からある同項8号の株主総会や取締役会で決議すべき事項について、その決議のほか種類株主総会の決議が必要であることを組み合わせた内容の種類株式を発行することにより、上場会社でも譲渡制限を付した「黄金株」を発行できることになったのです。

この制度は、とりわけ上場会社を救済するための増資の際に、優先株の引き受け手から第三者への譲渡を制限することには実務上のニーズがあるものとして採用されたようですが、昨今のライブドアや楽天のニュースの中ではもっぱら企業防衛策として意識されています。
この「黄金株」に対しては、東京証券取引所は「黄金株」を発行する会社は上場を認めないとのコメントを出し、他方、経済閣僚の一人は「会社法に認められた制度を利用しているだけなのに上場を認めないのは理屈が通らない」と反論しています。今後の展開が待たれるところです。