「働き方改革」の解説 その1 時間外労働の上限について
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◆2019年4月1日より順次施行
◆時間外労働の上限を年間720時間等に
◆事業・業務によって例外あり

2019年4月1日から働き方改革関連法が順次施行されます。
働き方改革とは、働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を自分で選択できるようにするための改革であると言われています。
その背景には、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く人々のニーズの多様化」があります。
つまり、労働に従事できる人口が減っていく日本において、より柔軟な働き方が選べるような労働法制にして、限られた労働力を有効活用していこうということが今回の法改正の目的です。

今回は、そのうち、時間外労働(残業時間)の上限設定について解説します。
この法律の施行日は、2019年4月1日からです。(中小企業については2020年4月1日から。
*中小企業の定義については、文末に記載)

これまでは法律上は残業時間の上限がなく、時間外労働についての規制は告示による行政指導のみでした。また、告示によっても、労使協定の内容次第で、(6か月の限度ではありますが)無制限に働かせることも可能でした。今回の法改正により、法律で時間外労働の上限を設定します。

まず、原則として、時間外労働の時間を月45時間かつ年360時間とし、臨時的な特別な事情がなければこれを超えることはできません。
次に、臨時的な特別の事情があって、労使が合意する場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることができません。
また原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。

これに違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

ただし、上限規制には、以下のとおり、適用猶予・除外の事業・業務があります。
(1)自動車運転の業務
改正法施行5年後に、時間外労働の上限規制を適用します。ただし、2024年4月1日以降の当面の上限時間は、年960時間とし、将来的な一般則の適用については、引き続き検討するとされています。

(2)建設事業
改正法施行5年後に、時間外労働の上限規制を適用します。ただし、災害時における復旧・復興の事業については、複数月平均80時間以内・1か月100時間未満の要件は適用しません。この点についても、将来的な一般則の適用について引き続き検討するとされています。

(3)医師
改正法施行5年後に、時間外労働の上限規制を適用します。ただし、具体的な条件時間等については、医療界の参加により検討の場において、規制の具体的あり方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得ることとしています。

(4)鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業
改正法施行5年後に、時間外労働の上限規制を適用します。

(5)新技術・新商品等の研究開発業務
時間外労働が一定時間を超える場合に医師の面接指導を受けさせること、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けたうえで、時間外労働の上限規制は適用しません。

上記のとおり、特例があるとはいえ、時間外労働の上限は、月45時間かつ、年360時間が原則であり、できる限りこの水準に近づける努力が求められます。
このため、新たに労働時間の延長や休日労働を適正なものとするための指針を厚生労働大臣が定め、必要な助言・指導を行うこととしています。
その際、当分の間、中小事業主に対しこの助言・指導を行うに当たっては、中小企業における労働時間の動向、人材確保の状況、取引の実態等を踏まえて行うよう配慮することとされています。

*中小企業の定義は中小企業基本法によります。

製造業その他
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

卸売業
資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

小売業
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人

サービス業
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人