<ポイント>
◆代表取締役や取締役等の登記を怠ると過料の制裁を受けることがあります
◆異議申立期間は告知を受けてから1週間しかありません
「過料」とは行政上の秩序の維持のために違反者に制裁として金銭的負担を課すものです。法人関係の過料については、大別すると、登記懈怠、選任懈怠、提出懈怠があります。以下、それらの例を紹介します。
株式会社においては、代表取締役の氏名及び住所や取締役の氏名、本店及び氏名の所在場所などに変更があった場合には2週間以内に変更の登記をしなければならず、これを怠った場合は100万円以下の過料に処せられます(会社法915条1項、976条)(登記懈怠)。
取締役会設置会社においては、取締役は3人以上でなければなりません(同法331条5項)。この法定の員数を欠いた場合にも100万円以下の過料の制裁の対象となります(同法976条)(選任懈怠)。
宗教法人は、毎会計年度終了後4か月以内に、事務所に備え付けた書類のうち役員名簿や収支計算書等の書類の写しを所轄庁に提出しなければなりません(宗教法人法25条4項)。これを怠った場合は10万円以下の過料に処せられます(同法88条)(提出懈怠)。
これらを怠ると法務局等から法人代表者の住所地を管轄する地方裁判所に通知が送られ、裁判所が懈怠事項を確認の上、検察庁に求意見を行います(非訟事件手続法120条2項)。なお、検察庁が手続に関与しますが、あくまで過料は行政上の制裁ですので前科にはなりません。
検察庁からの回答が返ってきたら、裁判官は決定を行い、法人代表者に対して決定謄本が送付されます。なお、実務上、法人代表者に対して事前に意見を聞かずに決定を行っています(同法122条1項)。
過料の裁判に対しては告知後1週間以内に異議の申し立てをすることができます(同法122条2項)。異議申し立てがされると過料の裁判の執行は停止されます。異議申立期間が短いことには注意が必要です。
過料の裁判が確定した場合には、検察庁から納入告知書が送付され、それを持参して検察庁に過料を支払うことになります。