弁護士法23条の2に基づく照会制度

 喜田 純章

2020年06月15日

<ポイント>
◆弁護士は所属する弁護士会を通じて各団体等に照会できる
◆弁護士会は関係者の利益を考量したうえで照会するかどうか決める
◆照会された側は報告義務を負うが、事実上強制力はない

弁護士法23条の2第1項で、「弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる」とされています。多少の費用はかかりますが、各弁護士は所属する弁護士会を通じて各種団体に照会をかけることができるのです。相手を訴えたい、あるいは相手から訴えられたときに、第三者の手元にある資料を使えばその裁判を有利に進めることができるなどの場合に活用されます。ただ、この制度は、照会する主体はあくまで弁護士会であり、照会の申出に対して弁護士会が必要性や相当性に関して厳格に審査したうえで、適正と判断したものだけが弁護士会から照会として発出されます。
つまり、弁護士であれば何でも照会申出できるわけではなく、その弁護士の依頼者の法律問題を解決するために有用な資料を集めるために利用される制度であることから、そもそも法律問題解決のためではない(例:顧問先企業が労働者の雇い入れのための身辺調査をするなど)場合はもちろん、一見問題解決に資するように見えても第三者のプライバシーや営業秘密を多分に害するおそれのある場合は相当性に乏しいとして、弁護士会から照会申出を拒絶されることもあります。

この弁護士会による23条照会につき最高裁は、「23条照会を受けた公務所又は公私の団体は,正当な理由がない限り,照会された事項について報告をすべきものと解される。」(平成28年10月18日)と、照会された側に報告義務が生じるとの見解を明らかにしました。ただ、最高裁は、報告を拒否した場合に関して、報告拒否に対する損害賠償請求及び報告義務の確認請求をいずれも否定しているため、報告拒否に対する強制力は事実上ないことになります。
確かに、弁護士会からの照会が来たとしても、真にそれが適切な利益考量がされたといえるかは照会を受けた側からはわかりにくいものであり、照会への回答をしたために、第三者からプライバシー侵害などとして損害賠償請求を受けるリスクもないとは言えません。その意味で、弁護士法による照会に何かしらの強制力を持たせることは難しいのかもしれません。実際、自治体や国の機関に対する照会は、守秘義務や個人情報保護を理由に回答拒絶される例はあります。

しかし、照会を受けた側からの協力で回答を適切に得られることが多く、依頼者にまつわる法律問題の解決のための資料収集手段の一つとして大きな武器になっていることは間違いありません。資料がなくて法的な対応に苦慮している場合でも、この照会を通じて突破口が開けるかもしれません。