内部通報制度とコーポレートガバナンス・コード

 森田 豪

2015年07月01日

<ポイント>
◆コードは内部通報の体制整備や運用状況の監督を要求
◆どのような体制や運用がふさわしいかは各社の判断に委ねられている
◆ただし経営陣から独立した通報窓口の設置は必要
◆ジャスダック、マザーズ上場企業も上記各点について同様に考えるべき

金融庁は今年3月にコーポレートガバナンス・コード原案を公表し、東証はこれを受けて実質同内容のコードを策定しました。
有価証券上場規程に所定の改正を行うかたちで6月1日からコーポレートガバナンス・コードが施行されています。

コーポレートガバナンス・コードは内部通報制度に関連して上場企業にいくつかの要求をしています。
まず、コードの原則2-5は前段で、従業員などが不利益を恐れずに通報できるように、また、通報内容が客観的に検証され適切に活用されるように、内部通報の体制整備を行うべきと求めています。
同原則後段は、取締役会に対し、そうした体制整備を行うことのほかに、内部通報制度の運用状況の監督を行うよう求めています。
また、前段の体制整備に関連して補充原則2-5①は、経営陣から独立した通報窓口の設置などを求め、例として社外取締役と監査役の合議体を通報窓口とすることを挙げています。

上場企業はコーポレートガバナンス・コードが求める事項を遵守するか、そうでない場合にはその理由を開示すべきとされます。近年よくいわれるコンプライ・オア・エクスプレインです。
また、プリンシプル・アプローチの建前の下、何をもって「コンプライ」と位置づけるのかは、第一次的には各社がそれぞれの個別事情をふまえて解釈すべきとされます。
これを上記の内部通報の体制整備のこととしていえば、例えば通報者の範囲をどこまでとするか、匿名の通報をいかに扱うかなどの論点について、コーポレートガバナンス・コードは単一の回答を強制するものでなく、各社がそれぞれ自社にふさわしい体制とすればよいということになります。
ただし、補充原則により、経営陣から独立した通報窓口の設置は必要です。例として社外取締役と監査役の合議体が挙げられていますが、そうした体制が必須ということではなく、法律事務所を外部窓口とするなどの方策も採りうると解説されています。
法律事務所を外部窓口とする場合に、顧問弁護士に兼務させるのか、顧問以外の法律事務所を採用するのかという検討事項があります。これについても各社の判断ということになるでしょう。
このほか、内部通報制度の体制整備、運用、その監督については本メールマガジンの連載をご参照ください。

内部通報制度に関するコーポレートガバナンス・コードの要求事項は、内容自体として新規なものではありません。

しかし、改めて内部通報制度が上場企業にとって必須であること、さらに、体制整備だけでなくその運用状況の監督が取締役会に求められることを明文のルールで宣言した点には意義があります。
内部通報制度の導入は一定程度進んでいるものの、残念ながら制度が充分に機能を果たさず、企業としては不正の早期発見のチャンスを逃したとみられるケースは後を断ちません。
コーポレートガバナンス・コードの施行をきっかけに、内部通報制度をいかに活用するか改めて考えてみるべきです。

なお、ジャスダック、マザーズに上場する企業についてはコーポレートガバナンス・コードの適用範囲は基本原則部分のみと限定されています。
しかし、上記でみた内容が直接的には適用されないとはいえ、上場会社において内部通報制度がかなりの程度まで普及している状況を考慮すると、ジャスダック、マザーズ上場企業であっても本則市場の上場企業に準じて内部制度の体制整備や運用状況の監督などが求められていると捉えるべきでしょう。