個人事業者の休業損害

 喜田 純章

2020年12月15日

<ポイント>
◆サラリーマンと異なり、休業損害立証に必要な資料は多い
◆日々の記帳が非常に重要
◆過少申告の場合には真の収入額よりも小さな額しか認定されない可能性あり

交通事故に遭っても、大したケガを負うことなく仕事が継続できれば、それに越したことはありません。しかし、ケガの影響で長期に通院をせねばならなくなるなどどうしても仕事に影響が出ることもあり得ます。
サラリーマンの場合は、事故による体調不良や通院で休みを取ったために減給されたり、有給休暇を利用した場合は、勤務先の担当者(多くは総務・人事部門)に「休業損害証明書」を作ってもらうことで、減給分や有給休暇利用分の補償を加害者に求めることが可能になります。
しかし、個人事業主の場合、誰かが休業損害を証明してくれるわけではありません。事故により仕事を休んで収入が減った場合、どのようにそれを立証するかが問題となります。まずは事故前年の確定申告書(白色申告の場合は収支内訳書、青色申告の場合は決算書も必要)が求められます。これが事故直近の被害者の公式の年間所得額になり、その人の事故がない場合の得られるべき所得の基礎となります。これに加えて、事故前直近3カ月間程度の収支状況や事故前年の治療期間と同じ月の収支状況もあわせて把握することで、治療期間中に事故によりどの程度の減収となったのかを細かく分析することが可能となります。つまり、個人事業者の所得の変化を詳しく証明するためには、日々の収支記帳が正確に行われていることが重要となります。ここがおろそかであれば(さらには確定申告において過少申告や無申告の場合)、本来得られるはずの休業損害が得られなくなる可能性があるのです。
いざとなれば、事業用の通帳の入出金記録や現金出納帳・領収書・受注書類などを利用して大まかな収支を確認していく方法もありますが、一番なのは日々の事業収支の記帳を真面目につけ続けるということです。裁判所においても、確定申告の内容を重要視しており、そこで過少申告をしていればその過少な所得額をベースに損害認定をすることが多いです(価値判断として、税金面で過少申告しかしていないのに大雑把な収入の証明で実はもっと稼いでいたという主張を認めることは正義に反すると思われているのかもしれません)。
損害額の立証責任はそれを主張する被害者の方にあるので、自分の収入面についてどれくらい損害を受けたかという点も被害者が立証する必要があります。日々真面目に記録をつけ続けた人がいざ事故に遭った時に報われるというのは当たり前のことです。また、収支記帳を正確につけ続けるというのは、正しい税申告のために必要ですし、自分自身の事業の成績を分析する上でも不可欠の作業ですので、事故に遭う遭わない以前の問題として、税理士を活用するなどして日々の収支を正確につけ続けることを心掛けたいものです。