中古住宅の敷地の境界

 木ノ島 雄介

2014年03月01日

<ポイント>
◆塀の所有者と土地所有者が一致するとは限らない
◆塀が買主のものなのか確定しないこと自体が「瑕疵」になる
◆境界や塀・柵の越境の有無についても丁寧な説明が求められる

不動産業者の方が中古の一戸建て住宅・敷地の売買を仲介する際、建物の外装・内装や間取りと比べると、境界標や境界線の説明にはそれほど時間を割かないことが多いと考えられます。「境界標」とは、隣地との境界点に設置された標識のことで、十字印や矢印が刻まれた杭を路上などで見かけると思います。この境界標と境界標を結ぶと「境界線」となります。

仲介不動産業者の方が境界標や境界線の説明にそれほど時間を割かない理由としては、以下のものが考えられます。
購入希望者も中古の一戸建て住宅を購入する際、住み心地の良さを判断するために建物の外装・内装や間取りに注意が向きやすい反面、これらと比べると境界標や境界線には注意が向きにくく、不動産業者の方の説明も自ずと間取りなどに関するものが多くなることが考えられます。もう一つの理由としては、中古の一戸建て住宅の売買契約が「契約締結後に売主は買主に境界を明示すればよい」という内容になっていることが多いことも考えられます。
よくみかける契約内容は、「売主は買主に対して残代金支払日までに、現地で境界標を指し示して境界を明示しなければならない。境界標がないときは設置して境界を明示しなければならない」というものです。契約締結時に買主から手付金が支払われるともに、その後の内金・残代金支払日を定めますが、契約締結後から残代金支払日までに境界を明示すればよいという内容になっていることがよくあります。

そして中古物件の売買では契約時までに境界の明示がなされないことがままあるため、契約後に思わぬトラブルになることがあります。
一例として、平成25年1月31日に東京地裁で下された判決を紹介したいと思います。
「ブロック塀は隣地に越境していない」との説明を売主や仲介不動産業者から受けて購入したのに、契約締結後、境界標のなかった境界点に境界標を設置するために売主が隣地所有者との間で境界の確認をすると、ブロック塀が完全に隣地に越境していることが明らかになったという事案です。
買主は、ブロック塀は土地の一部であるから、隣地に完全に越境している以上隣地所有者のものであったとし、これを瑕疵(欠陥)ととらえて売主に対して瑕疵担保責任(欠陥があることを理由に問われる法的責任)を追及しました。また、仲介業者に対しても、売買契約を結ぶ時には越境はないと説明していたのに、越境していることを知った後もその事実を原告らに知らせなかったことを理由に説明義務違反の責任を追及しました。

これに対して裁判所は以下の判断を示しています。
越境したブロック塀が隣地所有者のものになるかについては否定しました。確かにブロック塀は土地の定着物ではあるけれども直ちに土地の一部になるわけではなく、民法の条文上、土地境界線上に設置された塀や柵が双方の共有となったりどちらかの単独所有となったりすることを想定しており、塀や柵の所有者と土地所有者が必ずしも一致するとは限らないからです。
したがって、越境したブロック塀が隣地所有者のものであるとはいえないけれども、買主のものなのか隣地所有者のものなのか確定できないことを「瑕疵」と判断し、売主の瑕疵担保責任を認めました。
また、買主とも媒介契約を結んでいた仲介不動産業者は、契約締結時はブロック塀は隣地に越境していないと説明していたのに、契約締結後に越境していることが明らかとなり、これを知ったにもかかわらず、買主に説明しなかったのは説明義務違反にあたるとして損害賠償責任を認めています。

中古の一戸建て住宅を売ったり売買の仲介をしたりするにあたっては、隣地との境界や、塀・柵の越境の有無・状況についても購入希望者に丁寧に説明することが求められます。