<ポイント>
◆2021年5月1日から債務者名義の不動産について情報取得手続の申立てが可能になりました
◆全国の不動産を検索対象とすることが可能です
金銭債権について債務名義(判決正本や和解調書正本など)を取得した場合であっても債務者が債権者に対して任意の支払をしないことがあります。そのような場合には債務者の財産に対して強制執行手続を採ることになりますが、債務者の財産特定をしなければ強制執行を行うことができません。
2003年に財産開示手続(民事執行法196条以下)が設けられましたが、同手続は債務者による任意の財産申告を前提としているので、実効性に問題がありました。そこで、2020年4月から第三者からの情報取得手続(同法204条以下~)が創設され、債務者の預貯金債権等、給与債権及び不動産について関係機関から裁判所を通じて情報提供を求めることができるようになりました(なお、給与債権に関する第三者からの情報取得を申し立てることができるのは1.養育費や婚姻費用等の扶養義務に係る請求権2.人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権にかかる債務名義を有する債権者に限られます。)。
もっとも、不動産に関する第三者からの情報取得は政令で定める日までの間は適用しないとされ(令和元年民事執行法改正法附則5条)、2020年4月時点では申立てはできませんでした。
その後、令和2年政令第358号により2021年5月1日から申立てが可能となりました。
先取特権による申立てなど事情によって要件が異なりますが、一般的な要件は(1)金銭債権の債務名義を有していること(2)財産開示手続を前置していること(3)債務者が不動産,債権,動産,その他の財産を持っているかどうかを調査した上で当該財産に強制執行を行っても請求債権の完全な弁済を得られないことです。
情報取得を求める第三者は東京法務局であり、情報取得を求める範囲としては「全国」とすることが可能ですが、情報提供を急ぐ場合には地域を指定することも可能です。
なお、前置される財産開示手続において債務者が任意に債務者名義の不動産を開示した場合、さらに不動産に関する第三者からの情報取得を行うことができるかという問題がありますが、財産開示手続は債務者による虚偽陳述の可能性があり、信ぴょう性に疑義があるため、情報取得を続けて行うことは可能であると思われます(私見)。
不動産の情報が提供されたのち、債権者は当該不動産について強制執行手続を別途申立てることになります。