「むち打ち」と後遺障害
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<ポイント>
◆「むち打ち」は交通事故の軽傷事案では相当多くを占める
◆認定時の後遺障害等級は14級となることが多い
◆異議申し立てで認定されるケースもある

交通事故により、首をケガをした人のうち軽症である場合に多くある診断名に、「頸椎捻挫」あるいは「外傷性頚部症候群」というものがあります。これはわかりやすくいうと、首の「むち打ち」とほぼ同じです。事故による衝撃で首の筋肉などの組織が傷つき、痛みが相当な期間継続するというものです。

3カ月程度で症状が治まることも多いですが、長い場合、事故から半年あるいは1年も治療が続くケースもあります。その要因としては、年齢による回復ペースの鈍化や元々持っていた要因(自然老化による頸椎症など)が作用するなどがあげられます。筆者の感覚としては、概ね6カ月程度通院を継続して(その間、週2,3回のペースで通院・リハビリ)症状改善が見られない場合、これ以上は症状がよくならない「症状固定」に至っているということが多いと思います。もちろん、一概に決定づけることはできないので、担当医と患者間のコミュニケーションを十分に図り、症状が固定したかどうかを担当医に判断してもらう必要があります。

症状が固定したと担当医が判断した場合、担当医に「後遺障害診断書」を作成してもらい、その内容をもとに、自賠責保険に後遺障害の認定を求めます。むち打ちの場合、自覚症状と関連する客観所見(他覚所見)があるかどうかは重要です。具体的にはジャクソン・スパーリングテストなどの神経学的テストやレントゲン・MRIといった画像診断の結果などで異常がある場合、後遺障害診断書にきちんとその内容を記載してもらいましょう(医師の判断で、異常がない場合は記載が省略されることもあります)。可能であれば、各種検査結果の異常と患者の自覚症状がどのように関連するのか、その症状がなぜ継続するのかを説明する文章も記載してもらえればいいですが、そこまで詳しく記載されるケースはあまりありません。
加えて、通院期間がどの程度か、通院頻度はどの程度かという点も見落とせません。なぜなら、通院期間が短い、あるいは、通院頻度が少ないとなれば、それだけ症状は軽かったのだろうと判断される可能性が高くなるからです。これに関連して、症状固定後に体に不調がある場合に、自主的に通院を継続し(ただし、症状固定後の治療費は、原則として、加害者へ請求できないので健康保険を利用するとしても自己負担が生じます)、そのときの領収書で通院を継続しているという証拠を残し、それを自賠責保険へ提出するという方法もあり得ます。つまり、時間を割いて、どこからも回収できないのに自費で通院を継続しているということは、それだけ体の不調があるからだろうという推認を働かせるわけです。ただ、これも常にそのようにいうことはできず、症状固定後に通院する場合は、真に体に不調があるときにとどめ、後遺障害認定を得るためだけに症状もないのにわざと通院を継続するようなことは避けるべきでしょう。

各種資料を添えて、自賠責保険へ後遺障害の認定を求めたときに、その認定がされるとしても多いのは最も低い等級の14級です。むち打ち関連では12級の認定もありうるのですが、その場合、その事故により生じた異常な所見が客観的に確認できたことが必要であり、そのようなケースはあまりありません。まれに、MRIで自覚症状につながる頸椎のヘルニアが見つかる例もありますが、そのヘルニアが事故により生じたと言えなければ、14級にとどまるでしょう(元々無症状のヘルニアがあって、そこへ事故の衝撃で痛みが生じて後遺障害となるケースでは14級になることが多いです)。

自賠責保険で後遺障害の認定がされなかったとしても、すぐにあきらめる必要はなく、担当医に意見書を書いてもらってそれを追加の証拠にして異議申し立てをすることもあります。それにより、むち打ちの後遺障害について14級が認定されることはあります。

後遺障害認定の取得のためには患者と医師の信頼関係が重要です。両者間のコミュニケーションが十分にとれない場合、後遺障害認定は難しいこともあります。早期の段階で医師との信頼関係を築けないと判断した場合、信頼できる医師のいる病院へ転院することも視野に入れるべきでしょう。