執筆者:イスラム建築マニア
2018年06月15日

昨年の5月のこと。
わが家のレモンの木にたくさんいたアオムシが、ある日突然、神隠しにでも合ったようにいなくなってしまった。
丸々と小指くらいに太ったアオムシが約10匹と、それに続く幼いアオムシ・・・・下は鳥のフンのような生まれたての子までがさらに10匹以上いたのにきれいさっぱり跡形もなく消えてしまった。

いったい誰が?
ふと屋根に目をやるとアンテナに鳩がとまっている。こっちを見ながらクックックッと笑っている。
お前か!アオムシを食べたのは!
ネットで調べると鳩は基本的には草食系の雑食で、主な食べ物は穀物、木の実、種子など。昆虫も食べるがメインではない。
だいたいあんな大きな体でレモンの新芽の細い枝にとまってアオムシを食べるのは難しいだろう。
100%ではないが疑いは晴れたとしよう。

ではいったい誰が?
向かいの家の屋根に雀が数羽とまってこっちを見ている。
そういえば前にバルコニーの手すりにとまっているのを見たこともある。レモンの木とは目と鼻の先だ。
お前か!アオムシを食べたのは!
ネットで調べると雀は米や木の実、パンくずから小さな虫まで雑食とのこと。春から夏はアオムシも食べるらしい。
雀はかわいくて大好きだが、同じくらいにアオムシも好きなので複雑な気持ちになる。
かわいい雀が、ヒナのためにアオムシを運んでいるのなら・・・と思いたいがちょっと納得できない。
願わくば犯人は雀であってほしくない。他の可能性はないのか?
だいたいバルコニーに鳥の糞は落ちていない。

その2~3日後。
レモンの木の回りを隅々まで探すように飛んでいるアシナガバチ2匹を発見。しかもその翌日にもまた2匹でやって来てレモンの回りをくまなく飛んでいる。
まるで一度アオムシを見つけて味を占めて、毎日チェックに来ているようだ。
お前が真犯人だったのか!!
ネットで調べるとアシナガバチは害虫アオムシを食べる益虫などと書かれている。私にとっては逆だ。
そして春から夏はちょうど子育てのためのハチの捕食期間にあたる。
はたして本当にアシナガバチが自分より大きなアオムシを運べるのだろうか?
疑問は残るが、鳩や雀は近くで見かけただけだ。それに比べ、アシナガバチはまさに犯行現場となるレモンの木にいたのだ。しかも2日連続で。
そして、アシナガバチの捕食期間が終わる夏の終わり頃から、アオムシはまたいつもどおり増えていったのだ。その後、秋になりその数は自然に減っていったが急にいなくなることはなかった。
犯人はアシナガバチ。疑いは濃厚だ。
かわいい雀を憎まなくてすんでよかったー。いやいや、アシナガバチのエサになる方がもっと嫌だ。

アオムシは、いたらいたで大事なレモンの葉が食い荒らされてほとほと困る。
「もうこれ以上来るな。」と思ったこともある。でも、いざいなくなると淋しいものだ。毎日成長の様子を見るのはそれなりに楽しい。

そして今年の4月。
わが家で越冬したサナギたちが羽化しアゲハ蝶になって飛び立っていった。
その数週間後、今年もレモンの木には丸々としたアオムシが7~8匹いた。
きっと巣立った蝶たちがわが家のレモンの木に卵を産んだのだろう。
今までどおり毎日楽しく成長を見まもっていた。

そして今年の5月の終わりころ、アオムシはまた突然、全部消えた。
あたりに鳩はいない。雀もいない。アシナガバチも飛んでいない。
ただレモンがすくすくと育っている。