執筆者:気まぐれシェフ
2008年06月15日

おっさんみたい、と言われることが多い。
たぶん風貌のことではない。それならえらいことである。ヒゲも生えてないし、一応女性に見えているはずだ。

驚かれるのは、食べる量。
昼食は並みの女性の倍は食べているのではないだろうか。
朝と晩はあまり食べないのでお昼に1日分を摂取しなければ倒れてしまうというのもあるが、なんでみんなスズメの涙ほどのごはんで満足できるのかわからない。
人前では少食で可憐さをアピールしておきながら、きっと家にいる時にその分大量に食べているに違いない。私はそのアピール方法にはまったくメリットを感じないので、人の目を気にすることなくお腹いっぱいおいしくいただくことにしている。持参のお弁当では足りずにカップスープやお菓子をプラスしてみたり、ハンバーガーなら1個では当然足りずにさらにもう1個とチキンとポテトとスープなどという合わせ技もよく使う。
でも本物のおっさんに聞いてみたら「そんなにいっぱい食べない」そうで、ある意味私はおっさんを超えているようである。

それから野球が大好きなこと。しかも好き度は年々増している。
もちろん阪神ファンであることは、言わずもがなである。

しばらく前までは優勢な時だけノリノリで応援するようなへなちょこファンだった。ところが、どうしたことか野球そのものがどんどん面白くなってきて、まったく興味のなかった他球団のことまで気になりだした。我が阪神が強くなるためにはまず敵を知ることからと、今年はとうとう全チームの選手が載っている選手名鑑ポケット版まで購入してしまった。
これはワンコインのわりにかなりの優れもので、セパ両リーグの全選手のカラー写真に個人成績(2軍での成績も記載)、身長体重来歴などの個人データ、2007年度のランキング、歴代記録、入退団選手情報と、とにかく情報量がすごいのである。
相手選手がバッターボックスに立つたびに、ナイスプレーをするたびに、この名鑑で顔と名前とプロフィールを確認し、聞こえるはずのないテレビの向こうにむかって指令をだす。気分はすっかり監督である。余るほどのお金があったら迷うことなく阪神球団のオーナーになって思う存分采配をふるいたい。
虎戦士へ声援を送りながら名鑑をチェック、そして片手にはビール。試合中はそりゃもう大忙しなのである。

最近、ヨガやピラティスを習うべくスポーツクラブに入会した。トレーニングマシンのあるフロアにはテレビがずらっと並んでいるのだが、体を鍛えるというストイックさをまるで持ち合わせていない私はトレーニングマシンにまったく興味がわかない。しかし試合があれば話は別だ。野球見たさにエアロバイクに吸い寄せられていく。テレビに夢中になってはエアロバイクから「漕ぐのが遅すぎます!!」という警告をだされるがそんなことは知ったこっちゃない。思わず出る声をタオルで押さえるので精いっぱいだ。いったい何しに行ってるんだか。

さて、そろそろ、「五臓六腑」に沁みわたる季節である。
汗をいっぱいかいてノドがカラッカラでそれでも水分を取るのを極限まで我慢したあとのキンキンに冷えたビール。喉から食道、胃をとおって内臓すべて、まさに五臓六腑に沁みわたっていくのが感じられる。ぷー、この瞬間のために朝から今までがんばってきたんだよねーと思う至福のひと時である。
余談であるが、お風呂上がりにはビールをトマトジュースで割るとこれまた最高なので是非お試しいただきたい。
友人からの連絡がぱったり途絶えたときには「あの子?留守電いれてるけどなしのつぶてだよー」と言い、若干買い物中毒気味の「自分の背中は見えない」のに、サプリメント好きの父や韓国ドラマ好きの母には「過ぎたるは及ばざるがごとし」と一喝。悩んでいる友人には「待てば海路の日和ありって言うじゃん」と励ましてみる。
こんなふうに、四字熟語やことわざ、慣用句をつい使ってしまうあたりも、おっさんみたいなんだろうと自覚している。
しかし、これまた本物のおっさんはあんまりこんな話しかたはしない。
というか誰もしない。
このことに気づいて以来極力口に出さないように心がけてはいるのだが、胸のうちでのつぶやきはとめられないのだ。「四面楚歌」「一挙両得」「五里霧中」「類は友をよぶ」「朝令暮改」などぴったりのシチュエーションに出くわすと「これぞまさに!」と嬉しくなってこっそりつぶやいてしまう。

大食いに野球にビールにくどい表現。
できれば傷が深くないうちに軌道修正して女性っぽくなりたいが、もうすでに傷は深いのか?どれも捨てることなんてできない。
こうなったら、せめて嫌われるおっさんではなく、かっこいいおっさんになっていきたいものである。