執筆者:イスラム建築マニア
2014年11月15日

今年の3月にウユニ塩湖に行ってきました。前回のエッセイで書けばよかったのですが、その時はレモン栽培にはまっていて、ついレモンのことを書いてしましました。
がしかし・・・今、ウユニがすごいことになっていることもお伝えしたいので、忘備録を兼ねて書いておきます。

まず、ウユニ塩湖というのは、南米ボリビアの標高約3,700メートルのところにある秋田県ほどの広さの巨大な塩湖です。ビートたけしが青空と雲が水面に鏡のように映る不思議な空間を歩いているポカリスエットのCMで一躍有名になりました。2~3年前から絶景番組でもよく取り上げられるようになっています。

2011年にウユニに空港ができ、少しは行きやすくなりましたが、それでも大阪からだと飛行機を乗り継ぎ、乗り継ぎして行かなければならず、まだまだ秘境です。
空港ができるまでは、断崖絶壁のガードレールの無い転落事故多発の細い道(通称:デスロード)をバスで山越えして行くのが一般的でした。
そんな小さなウユニの町に、今、日本人が大挙して押し寄せているのをご存知でしょうか。

私が行ったのが3月1日からと、ちょうど大学生の卒業旅行シーズンと重なり、ウユニは雨季の終わりかけで、晴れの日が多いけれど雨季に降った雨が残っていて鏡張りも見られるという時期だったので特に多かったのかもしれません。

まず、ボリビアに入るまでのことですが、シカゴではアメリカン航空が大雪で出発が2時間も遅れ、次のマイアミからボリビアの首都ラパスへの乗り継ぎ便の出発時刻をとっくに過ぎてしまいました。
が、乗り継ぎ便は出発時刻を大幅に遅らせて待っていてくれました。
マイアミからラパスに入る日本人(=ウユニ塩湖に行く日本人)があまりにも多いため、こちらを優先してくれたのです。

さらに、ラパスからウユニへの飛行機は早朝6時と早いため、早朝から朝食が食べられる立地の良いホテルに泊まりましたが、朝食のレストランに行ってびっくり。日本人だらけです。ツアー客なわけではありません。同じことを考えている個人旅行者たちです。

そして、ラパスからウユニには小さな飛行機で行きますが、大半が日本人です。小さなウユニ空港でスーツケースを待っているときなどは、普通に日本の田舎の空港のようでした。日本人ばかりで日本語しか聞こえてきません。

そして、ウユニの町に着いたら、メイン通りに並んでいる旅行社で4WDをチャーターして、いざウユニ塩湖に入るのですが、旅行社のあたりは日本人の若者であふれかえっています。
車1台7人乗りで約150ドルなので、そこで出会った者同士で共同でチャーターしようとみんながメンバーを探しています。
すぐの出発でないときは、○日○時から○名募集とメンバー表に記入して店頭に貼っておけば、それを見た人が表に名前を記入していってメンバーが集まるようになっています。
書き込まれている名前を見るとみな日本人です。年齢は書かないので、若そうな今どきの女の子の名前が書かれているとメンバーが集まりやすいようです。あくまで個人の感想です。

さて、旅行社の店内はというと、男も女も2~5人の小グループで来ている者が多いようで、どのグループと組むかを巡って攻防戦が始まっています。
しばらく観察していました。

まず、かわいいい女の子2人組を見つけた男3人組が声をかけました。どうやら一緒に行くことになったようです。ここでさっさと決めればいいのに、あと2人女の子を探したかったのか、ぐずぐずしているうちに、他のグループからも一緒に行きませんかと誘われてしまいました。
こういった場合、日本人は嫌だと言えないようで、「では、一緒に。」となりましたが、そのグループは男女混合の5人くらいのグループです。和を重んじる日本人は、「では、車2台で行きましょう。」ということになり、かえって更なるメンバー集めが必要になりました。
ちなみに車1台にドライバー1人が付くチャーターツアーは、サンライズツアー、デイツアー、サンセットツアーと3パターンあり、時間は決まっています。

人数が多くなったそのグループの様子をさらに伺っていると、なかの小グループはウユニ1伯の者や2泊の者が混じっており、今日はサンセットだけで、明日サンライズが希望という者や、時間がないから今日、強行で行きたいという者や、仕切りたがる者が出てきてきたりなどで、だんだん揉めはじめています。

なかなか決まらず嫌気がさしてきたのか、女の子2人組は大グループから抜けようとしだしました。男3人組は最初の予定どおり5人で行きましょう、と何とか女の子を他に取られまいとします。

その後、どうなったのか知りません。圏外のOL2人組の私たちは、めんどーくせーっと金にものを言わせて2人だけでチャーターして、さっさと自分たちの行きたいように行きました。
大騒ぎの若者たちを、なんて面倒くさいやつらなんだと思う反面、若いなぁとほほえましく、また懐かしくも思いました。
こんなことが毎日繰り広げられているのです。ウユニのツアーは出会いを求める若者たちでラブワゴン状態です。
知らない方のために・・・ラブワゴンとは、かつて人気番組“あいのり”で出会いを求める男女が相乗りして旅したワゴン車のことです。

それを知ってか、時間のあるうちに遠い南米に行っておこうとしているのか、今や小さなウユニの町には日本の若者たちが押し寄せ、ほんの数件のしかないレストランやみやげ物屋はどこも日本人だらけです。
秘境を求めてきている旅慣れた旅行者たちはみな、ハワイのようだ、日本のようだと少しがっかり気味でした。
なにを隠そう私たちも、旅行中、どこに行っても日本人だらけの今回の旅行にちょっとがっかりでした。但し景色は最高でした。

ウユニの人は不思議がっています。
なぜ、日本人がこんな辺境に大勢やってくるのか。しかも雨季に。
水面に空の映る鏡張りを愛するのは日本人特有の美意識のようです。
ウユニの人は日本人観光客が増えるのを喜んでいる反面、日本人が来るようになってから物価が上がったと嘆いてもいました。
いつの間にか、遠く離れた秘境ウユニは、こんなことになっているのです。

▲ウユニ塩湖