執筆者:気まぐれシェフ
2015年06月15日

たまに、大阪では一家に1台たこ焼き機があるって本当?と聞かれる。
我が家には無いけれど「あるよ」と答えることにしている。
だって、「あるよね?あるって言ってー」という顔をして聞いてくる人に「無いよ」とは申し訳なくてとても言えない。
それに、「えっとな、小さい頃はあったんやけど今はもう無いねん。子どもの時はおやつがわりにたこ焼き食べてたけど、大人になったらわざわざ作る時間もないし、しょっちゅうたこ焼き食べてる大人は少ないんちゃうかな。あ、でもホットプレートにたこ焼き機ついてるから持ってる家はやっぱり多いんかなー、どっちか言うたらお好み焼きのほうがよく食べるよ」と解説したいが、なんだかグダグタな感じになるので、結局、ひと言「あるよ」となる。
そう答えると、やっぱり本当なんだね、ととても嬉しそうにしてくれてその後の話も弾むので、まったくのウソでもないしそのまま訂正することなくやりすごす。そういう大阪人は私以外にもきっといるはず。
大阪あるあるで堂々の第一位に輝く「一家に1台たこ焼き機」。その場のノリと優しい嘘も含まれているのでご注意を。

大阪あるあるといえば、待ち合わせはだいたいにおいて遅れた方の「ちゃうねーん」から始まる。「ちゃうねん、ほんまちゃうねんって」ってまだ誰も何も言ってないのに。
待たされた方は何がちゃうねんやねん、ちゃうことあるかいな遅れただけやんと思うけれど、聞いてくれ~という光線がビシビシと伝わってくるので「どしたん?」と聞いてあげる。そこから先は、どんな大事件が起きて遅れてしまったのかをいかに同情をひくように話せるかが遅刻者の腕の見せどころである。
明らかに大げさに盛られた話を聞かされるうち、なんでいたわってやらなあかんのやろと思いながらも、そら大変やったな、まあ水でも飲んで一息つきなはれ、と次第に怒る気持ちも失せていき遅刻がうやむやになっていく。円滑な人付き合いのためになくてはならない儀式とも言える。

某テレビ番組で、大阪人は阪神タイガースの話になると、見知らぬ人の会話にも躊躇なく参加するのは本当かという検証をやっていた。
検証するまでもない。本当です。おじさん率の高い居酒屋さんでは必ず阪神の野球中継が流れていて、誰が打ったんやろ?とつぶやけば、鳥谷がヒット打ってなー、とどこからか声がする。この打順どうなんよとお題を振れば、カウンターの全員が「俺が阪神の監督やったら~」となる。阪神好きなだけで、もう連れも同然なのだ。

私は生粋の大阪人ではないので、偉そうなことは言えないけれど、大阪人はノリと人情で生きている。
あるよね?と期待されるとあるよ、と言ってあげたいし、知っていることは教えてあげたい。共感したら話しかけたいし、失敗したら許してほしい。YESと言うのは好きだがNOはできるだけ言いたくない。行けたら行くわーと微妙なニュアンスの返事でやんわり断る。真実かどうかよりも喜んだり驚いたりしてくれるほうが大事なのだ。お調子者とは言わずサービス精神旺盛と言ってほしい。

「蚊にさされてん、ここ。めっちゃかゆいねん~」と地元の居酒屋さんで連れに刺された跡を見せていた。その肩をちょんちょんっとつつかれたので振り向くとそこにはムヒ。ムヒ?
「お姉ちゃん、これ貸したるわ!効くで!」とどや顔なのは隣に座っていたおじさん。
えーーっ。貸したるわって、まさかおじさんご愛用の?ご使用中の?あまりの親密っぷりになんと返事していいのか言葉を失った。サービス精神ハンパない。大阪人ってすごい。まさかまさかのムヒあるあるでした。

ちなみに、たこ焼き機よりも確実に家庭にあるものはきっと、モロゾフのプリンのガラスコップである。