普通自動車の免許を取得したのは、もうはるか昔のことです。
当時は自宅近くを通る市バスは1時間に1本、駅発最終便は19時50分といった不便な田舎に住んでいました。
自分の車がほしいなあと思っていましたが、昔のことです。女性が運転するなんて危ないから駄目だと家族の反対もあり、なかなか免許を取れずにいました。
その頃仕事は残業が多く、またお稽古で琴や三味線を運ぶことも多かったので、説得のうえやっと取らせてもらえることに。
仕事をしながら教習所に通うのは大変でしたが、上司が時間面で結構融通をつけてくれました。
「そのかわり、一発で合格してこいよ!」
その甲斐もあり、1ヶ月半程で免許を取得できました。
最初に購入したのは、中古車のセダン。
三角窓が開閉できることが気に入り、外見だけで決めてしまい失敗した経験があります。
しばらくたって、だんだんとエンジンがかかりにくくなりました。
どうやら事故車だったため電気系統が調子悪く、それからはいつも車にバッテリーを積み込んで走っていました。
和服を着ている時も、大雨の時もお構いなし。まずはボンネットを開けて充電しないと動きませんでした。
もう中古車には懲り懲りでしたので、その後は贅沢にも新車しか購入しませんでした。
生活スタイルに合わせ、車もいろいろ買い替えていきました。
3人目の子どもが産まれてからは、5代目となる7人乗りのミニバンを購入。
広い車内はシートを倒すとフラットになり、子どもが3人十分寝ることができます。
私は運転が好きで、よく家族で早朝からスキーやドライブに行きました。
自転車は載るし荷物も結構入るので、引越しの手伝いを何度か買って出たこともあります。
運転がしやすくとても気に入っていたので、今までで一番長く乗った車です。
3年前、13年以上乗った車を廃車にして新車を購入すると25万円の補助金が出る上、エコカー減税も受けられる制度ができました。新車に買い換える絶好のチャンスでした。
しかし、ずっと青空駐車でしたので塗装がところどころ剥げてきてはいましたが、故障もせずまだまだ快適な走りが可能でした。
すでに子どもたちも成長し、家族全員でドライブすることもなくなりましたので、今度は小さなかわいい車にするつもりでいました。
大きな車は燃費が悪く、維持費も大変だったのです。
どうしようか結構迷いましたが、まだまだ廃車なんてもったいない、もう少しお世話になることに決めたのです。
そして、昨年の春にはタイヤを新調し、バッテリーも買い替え乗り続けていました。
足回りはケチらず整備しましたが、塗装面はほったらかし。
ワインレッドの車がボンネットと天井は白っぽくなって、それはひどいものとなっていました。
昨秋には三男が免許を取り、その車を運転するようになりましたが、「格好悪い、友達に笑われた、新車買わんの」と文句をいう始末です。
心斎橋まで乗せてあげた時など、「恥ずかしいから、サッサッと走り去ってくれ」と言われもしました。
「でも、さすが4WDやな。山道は軽自動車と比べものにならんわ」とも・・・。
ある日、初心者マークの息子の運転が悪かったのか、私の運転中に突然エンストしエンジンがかからなくなってしまいました。
ロードサービスの人に見てもらったところ、ファンベルトが切れているとのこと。
他のベルトも切れているかもしれず、そうなると修理代がとても高くなるそうな。
〈もう潮時かな〉16年も経つと下取りも無理だし泣く泣く手放すことになりました。
せめて廃車の手続きは自分でしようとナンバープレイトを抱きかかえ、陸運局へ向かいました。
「今までずっと無事故で家族を守ってくれてありがとう」
さて、次の車はどうしよう。最近はあまり乗らないしレンタカーにするべきか。
でもよその車は気を使うし、運転好きの私としてはやっぱり身近に車を置いときたい・・・。
60歳がきたら真っ赤なミニを運転することが夢でしたが、その前に子どもと共用のコンパクトカーを買うことにしました。
息子と協議の上、車体の色は赤は却下となりモカブラウンになりましたが、せめて形はミニバンに似たものをと譲歩してもらうことに。
愛車のため今度は屋根のある立体駐車場に借り替えました。
そして、年末の慌しい時期に待望の新車が届いたのです。
「6代目!これからどうぞよろしく!」