執筆者:気まぐれシェフ
2023年04月15日

2023年3月、WBCがいよいよ始まった。
ずっとずっとこの時を待っていた。超一流の野球選手が競い合う世界一決定戦である。侍の一挙手一投足を目に焼き付けたい。ロッカールームでの雰囲気も見たいし、ベンチの様子も眺めたい。一流同士が投球や打撃を教え合っている姿は感動ものである。他国の選手との国境を越えた交流にも心がなごむ。
期間中はテレビ、ネット、ニュースアプリにSNSをくまなくわたり歩きチェックする日々が続いた。

こんなに楽しいWBCは初めてだった。
これまでのWBCもオリンピックもすべて全力で応援したしすごく楽しかったが、日本を背負うことの重圧に耐えながらプレーしなければいけない侍たちにはどこかしら悲壮感も漂っていた。勝たなければ自分勝手な世間からどんな非難を浴びるかわからない。それは応援する側にも伝染するわけで、応援というよりは無事に勝ち抜くように祈るといったほうが正しかったかもしれない。
今回の侍たちは本当に楽しそうだった。SNSのおかげで練習風景や食事会や彼らの人となりを垣間見られたからなのか、彼らがそういう世代だからなのかわからないが、和気あいあいとまるで甲子園で頂点を目指す少年のように楽しんでいるのが伝わってきた。
彼らの世紀の大活躍については触れだすと止まらないのでやめておくが、何度観返しても、そして裏話を知れば知るほどに面白くて感動する試合なんてそうそうあるものじゃない。それが何試合もあったのだ。ああ、永遠にこのメンバーでWBCやり続けてほしい。

優勝後も侍ブームは続き、ニュースアプリもSNSもYouTubeも侍たちのエピソード満載である。しかし何日たっても野球ネタしか出てこない。世間のWBC熱は私以上に冷めないのか??
しかし新聞ともテレビのニュースともなにかが違う。世界情勢とか経済とか政治とか事件とか、そういう記事が一切見当たらない。よくよく見れば記事一覧の一番上に「あなたにおすすめ」とうっすら小さい字が!
信じられない。ネット検索した電化製品が別の検索のときに広告にあがってきたりするのと同じ仕組みである。私あてに見繕った記事だけを読まされ続けていたのだ。気づかんかった。記事動画の99%が野球。残り1%が犬と猫。好きだけど。いいけど。私の頭の中は野球と動物しかないんかい。
さすがに具合が悪い。この傾向をリセットする方法を調べるがわからない。解決方法はただ一つ、見ないこと。野球には反応せずせっせと政治経済の記事をクリックし続けて、趣味嗜好が変わりましたんでこちらの記事もいただけませんでしょうかとアプリにお伝えするしか無いようだ。

でもでもやっぱり「大谷選手のストイックな食事」とか「吉田選手の豪快なHR」とか「佐々木朗希の剛球」の見出しが目にはいると思わずクリックしてしまう。そうなれば最後、やっとのことでおすすめされ始めていた政経ネタはあっけなく吹っ飛び、またもや大谷さんや吉田さんや佐々木さんに浸食されてしまう。ついでに水原さんネタも流れてくる。水原さんにまで詳しくなってしまった私ってどんだけよ。
終わらん、これは終わらんぞー。どこかでクリックループを断ち切らないことには永遠に野球以外の情報を得られないではないか。

新しいニュースがありますと今日も甘い誘惑がスマホに届く。きっと大谷さんの新しい情報だ。試合結果か可愛い笑顔ショットか。たまに出る栗山監督情報かもしれないし、ちょっと見劣りするけど我が阪神タイガース情報かもしれない。見たいー、でも見たらいかんのだ。ダイエットの数倍、数万倍もきつい。
絶え間なく届く甘い誘惑から身をよじり、断腸の思いで野球ニュースをスルーする日々は今日も明日も果てしなく続くのである。つらい。